この沖田総司は可愛すぎる!! 新選組と「ほかほかご飯」を掛け合わせた、優しく切ない青春ストーリー

マンガ

公開日:2017/1/30

『だんだらごはん』(殿ヶ谷美由記/講談社)

  中学生の頃から、大の新選組好きで数々の小説、マンガを読み漁った私が、久しぶりに「これは……!」と興奮した新選組マンガがある。『だんだらごはん』(殿ヶ谷美由記/講談社)だ。

 新選組となる前、江戸の試衛館道場で日々剣術の修行をしている青年・沖田宗次郎(おきた・そうじろう/後の沖田総司)と山口一(やまぐち・はじめ/後の斎藤一)が「落ち込んでいる近藤(後の新選組局長)のために料理をする」ところから始まる本作。

 そう、この物語は「新選組」と「江戸ごはん」を掛け合わせた、今までの新選組マンガとは、ちょっと視点の違う物語なのだ。

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 基本、ローテンションでやや物事を斜めから見がちな山口と、天真爛漫な沖田は、性格も食の好みも正反対な二人。山口は沖田のことを「苦手」だと思っているが、沖田は同年代で同じ剣の実力を持つ山口に好意を抱き、何かとつきまとっている。

 ある日、沖田の師匠で家族同然の近藤に不幸な出来事が起こり、近藤は落ち込み、食欲を失くしてしまう。沖田はそんな彼を元気づけるために、山口と共に「玉子ふわふわ」という料理を作ることに。

「玉子ふわふわ」とは、徳川三代将軍の家光も食べたことがあるという、由緒のある饗応料理。どうやら、「ふわふわの玉子がのった雑炊」らしきもの(ネットでググると画像が出てくるので見てみよう! かなりおいしそうだ)。

 この他にも、本作には「とろ飯」「納豆汁」「イカのかぴたん和え」といった料理や、「文字焼き」「さくら餅」などのお菓子も登場する。単行本には江戸ごはんのレシピも掲載されているので、当時の山口・沖田気分で料理をしてみるのも楽しいはずだ。

 さてさて、「食」×「新選組」の組み合わせが最高!! と書いてきたが、それだけではマンガとして「そこそこ」の面白さだったと思う。

 本作が歴代新選組マンガランキング第2位(※個人の意見です)の称号を得たのは、山口や沖田の成長をしっかりと描き、また彼らが抱えていたであろう葛藤や悩みなどにも触れられているからだ。

 時々、斬新な発想の新選組をモチーフにした作品の中には「別に新選組じゃなくてもよかったのでは?」と感じることがある。本作では、それを感じなかった。「ごはん」がイロモノのネタではなく、彼らの生活や感情と深く関わっていると思えたからだ。

 また、「江戸ごはん」に関する知識はもちろんのこと、江戸の街並みや建物の描写がしっかりとしており、「彼らの生きていた時代」を色濃く感じられることも大きな要因だろう。
「なんちゃって新選組マンガ」を読んでいると、「歴史のこと知らねぇな~」と思うことが多々ある。建物しかり、服装や風俗しかり。

 一方で本作は登場人物の髪型や姿形こそ「江戸時代ではない」のだが、その他の着物の柄、刀、寝具、提灯やお弁当箱といった小物に至るまで、細部にこだわって描かれている。

 別に教科書ではないので、何から何まで史実的に正しい描写をする必要はないと思うのだが、本作のような「こだわり」は内容に厚みを持たせてくれる。「彼らの生きていた時代」を色濃く感じられるからだ。

 山口や沖田を始めとした(のちに)新選組となる面々の「生活感」を感じさせてくれる一方で、「食」を通して描かれる青春マンガ。さらに沖田総司がとてつもなく可愛い(土方さんもかっこいい)。

 ピクシブコミックで、誰でも無料で読めるが、細部の描写まで味わい尽くすためにも、ぜひ単行本をゲットしてほしい。今一番おススメの新選組マンガだ。

文=雨野裾