研究者の仕事、喜び、達成感、そして生活とは。文系の私には謎だったので読んでみた

小説・エッセイ

公開日:2011/10/11

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:森博嗣 価格:840円

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物心がついた頃から文系だったという自覚のある私には、理系世界に対するあこがれがある。数式は美しいとか、物理や化学の研究が楽しくてたまらない、なんていう人には尊敬のまなざしを向けてしまう。そんな思いもあるものだから、理系人間の生活や大学の研究室の中はどんなことになってるのか興味があって、この本をダウンロードした。

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主人公は大学の学部生から修士課程を経て博士課程に進む「僕」と、その指導教官で大学の助手の喜嶋先生。研究にしか興味がなく、研究者としては周囲から一目置かれているが、一般人から見るとやや変人で出世欲もなさそうなため、実力があるのに助手というポジションに甘んじている。というより、その方が研究に没頭できるので、助手でいることに不満がなさそうな喜嶋先生を、「僕」は研究者として尊敬している。

この2人の研究者としての生活が、「僕」の視点で、日記のように淡々と延々と綴られる。ほとんど大きなドラマはなく、この2人を中心に先輩の院生やゼミの学生、「僕」のガールフレンドがときどき登場する程度だ。じゃあ、何がおもしろかったのかというと、私にとっては未知の世界だった研究者の生活がどんなものか、ほかのことは何もかも忘れて研究に没頭する喜びはどこにあるのか、またどんなものか、博士課程に進んでも価値あるテーマに巡り会えなければドロップアウトして、不本意な就職をしなければならない厳しい現実もあることなどが、少しわかったことだろうか。


読むのが苦手な「僕」が図書館に行くと

物理法則に従って「オートマティック」にものは動く。それが面白かった…そういうものなんだ

喜嶋先生との時間を振り返る余裕ができた「僕」は、見失ったものを探すためにこの本を書き始める