だからあなたは痩せられない! 消費者を脅かす危険な“フードトラップ”

更新日:2014/10/21

フードトラップ ― 食品に仕掛けられた至福の罠

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 日経BP社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:マイケル・モス 価格:2,160円

※最新の価格はストアでご確認ください。

なぜあなたは、痩せたいと思いながらコーラを飲むのをやめられないのか?
なぜあなたは、体脂肪を気にしながらポテトチップスの大袋を食べ切ってしまうのか?

 『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』(マイケル・モス/日経BP社)の中にその答えがある――原題は『Salt Sugar Fat: How the Food Giants Hooked Us』――塩分、糖分、脂肪 いかに巨大食品企業が私たちを引っ掛けてきたか。この原題通り、本作は味覚そのものに潜む依存性に光を当て、食品・飲料メーカーや外食産業がその仕組みをどのように利用してきたかを露わにする。

advertisement

 アメリカ疾病予防管理センターの発表によれば、米国では現在成人人口の3分の1以上が肥満に苦しんでいる。米国ほどの惨状ではないが、日本でも40代から60代男性の肥満率は30%を超えたと厚労省サイトは伝えている。肥満は糖尿病・心臓病・脳卒中・癌などの原因になる。肥満の原因と目されているのが糖分たっぷりの清涼飲料水に菓子類、チーズたっぷりのピザやハンバーガーといった加工食品やファストフードであり、さらに添加された塩分で血圧も高くなる。

 当然、摂りすぎれば健康を害するものを売ってもよいのか、という抗議がメーカーに寄せられてきたが、糖分・脂肪を摂りすぎるのは消費者の責任だというのがこれまでの企業側の言い分だった。加工食品がどのように私たちの快楽を刺激するよう開発されているか、消費者に知らされたことはなかったのだ。そもそも、食品会社は健康イメージを売りはするが、営利企業なのだ。加工食品を売るために重ねている研究の目的は、いかに多く食べてもらい多くの利益を上げるかということであって、消費者を健康にすることではない。

 しかし本書からは、食べ過ぎるよう設計されたものを食べ過ぎてしまうのは本当に消費者の責任なのだろうか、という大きな問いが浮かび上がってくる。食品メーカー広報、米政府、消費者団体、内部告発者、心理学者、栄養学者など、様々なソースへのきめ細かい取材は読み応えがある。その内容も驚愕の連続だが、本自体の構成も、ある秘密が解決されたらその次、と綿密で、新事実が明かされる面白さにどんどん読み進んでしまう。驚きが連続しすぎるので、ミステリーを読んでいるような気分にさえなってくる。小説以上にスリリングに面白く読めるが、これが事実であることの怖さよ。しかも食品メーカーは悪役ですらないのだ。では誰が、何が悪いのか? 自分を守るために読んでおきたい1冊だ。


糖は麻薬と同じ効果を脳に及ぼす。一度依存症になれば、克服が難しいのはドラッグと同じだ

スナック菓子のサクサクした口当たりを生み出す脂肪。減らされてもわからないが、増やされてもわからない

添加物で加工食品の風味は悪くなるが、塩分がそれをカバーする。またナトリウムは防腐剤としても使われる