2025年大河の主役はどんな人物? 江戸時代の超敏腕プロデューサー・蔦屋重三郎に学ぶ、圧倒的な成果を出す人の仕事術
公開日:2025/1/20

初回から話題沸騰中の2025年大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の主役は、横浜流星さんが演じる「蔦重(つたじゅう)」こと「蔦屋重三郎」だ。このドラマがきっかけで彼のことを知った人が大半かもしれないが、実は江戸文化好きにおいて蔦重はちょっとした有名人。「江戸のメディア王」として、あの喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎といった浮世絵師たちを世に知らしめた人物だからだ。
かつては知る人ぞ知る存在だった蔦重も、ドラマのおかげでめきめき有名人となり、現在では多くの関連書籍も出版されている。
そのようななか、時代小説家、車浮代氏の『仕事の壁を突破する 蔦屋重三郎50のメッセージ』(飛鳥新社)は、数ある蔦重本において異彩を放つ一冊。突き抜けたビジネスセンスによって江戸の出版界に革命を起こした蔦重の仕事術やマインドを、「メッセージ」というかたちで体系化して伝える、新たな切り口の作品だ。
ベストセラー小説『蔦重の教え』(飛鳥新社/双葉文庫)の作者である車氏は、蔦重がまだ世間的に認知されていなかった頃から、その生き様や精神性、仕事観に惚れこんでいたという。それも無理のないことであり、蔦重の人生は、吉原遊郭に置き去りにされた子どもが、やがて江戸一番の出版人になるーーという、ハリウッド映画さながらのサクセスストーリーを華麗に実現したものであり、そこには現代人の心にも響く「成功の秘訣」が詰まっているからだ。
このたびの新刊では、そんな蔦重から学べる仕事と努力の極意を、例えば以下のように、実際のエピソードと重ねながら紹介していく。
人様に与えられる「天分」は、探せばきっと見つかる
天分とは「天が与えてくれた才や役割」の意味だが、平たくいえば「自分が世の中に貢献できる、得意な何か」。蔦重の場合は『吉原細見』(吉原遊郭のガイドブック的なもの)のリニューアルの成功が「メディア王」への第一歩となったが、その原動力となったのは、生まれ育った大切な場所、吉原再興への思いだった。そうした願いの先に巡り合ったのが『吉原細見』であり、その成功によって「出版は自分に向いている」と「天分」に気付いたわけだ。「自分に何ができるのかわからない」と悩む人は多いけれど、前に進まなければ何も見つからない。「自分の胸が熱くなるのは何か?」と、いまいちど問い直すのもいいだろう。
転ばされたら、何かしら、つかんで立ち上がる。100倍にして取り返せ
自由な田沼意次時代の後、江戸には松平定信の「寛政の改革」による厳しい風紀取り締まりの嵐が吹き荒れる。目をつけられた蔦重は次々に制約を課せられ財産没収すらされたが、決して屈せず、「抑圧すらも肥やしにしてやる」とばかりに幕府への風刺の効いた作品などで対抗した。そんな蔦重のファイトは江戸っ子たちの心躍る最強のエンタメとなり、蔦重の名前はさらに轟くことに。不利な状況を逆手にとり、むしろ「図太く」対応すること。蔦重の人生は逆境に対する心意気も教えてくれる。
感動は作り手の狂気から生まれるもの
写楽や歌麿などが注目された理由には、実は本人の画力のほかに蔦重プロデュースによる驚くべき職人技(多色摺りや、凝った彫摺など)の下支えがあった。蔦重にとって本を作ることは「感動」を売ることであり、その「感動」は狂気ともいえる「こだわり」から生まれるもの。そしてその根源にあるのは「プライド」。つまり自らの仕事への誇りから、狂ったように蔦重はその道を極めたわけだ。その真剣さは、かなり刺激的だ。
本書が紹介する「メッセージ」の数々は、ビジネスだけでなく、生き方全般にも効きそうなものばかり。蔦重の人生もコンパクトにまとめられているので大河の導入にも持ってこいだが、とにかく「江戸時代の人物の生き方が今の自分にこんなに刺さるとは!」と驚くのは間違いない。蔦重という人物にますます興味がわくとともに、壁を超えるための覚悟を手にできる一冊だ。
文=荒井理恵