安部若菜 エッセイ連載「私の居場所は文字の中」/第11回「学生から大人へ」

文芸・カルチャー

公開日:2025/1/24

1月後半の今、大学ではテスト期間真っ最中。
大学4年の私も、大学生活最後のテスト勉強に励んでいます。

この時期にはもう単位を取り終え、目前に迫った就職を控えるのみ、という状態の4年生も多いでしょうが、私はギリギリになってしまったもので、「このテストで失敗すれば留年…」というプレッシャーを背負いながらの挑戦です。

最後のテスト、嬉しいはずなのに、今は複雑な思いです。

テスト期間に良い記憶のある人は少ないと思います。
あぁ、勉強面倒くさいなぁ。テストで点数取れるかなぁ。
ストレスのかかる期間で、私はテスト期間を嬉しいと感じたことは一度もありませんでした。

でも、大学生活最後のテストを前にして、これが終われば定期的に勉強することもなくなり、勉強から解放される、と思うと手放しに喜べないもので。

小学生で6年、中学生で3年、高校生で3年、大学生で4年。16年間も勉強に追われてきて、4月から突然学生でなくなることがとても不安なのです。
だって、ここから先は未知の世界です。

私は高校1年生でNMB48に加入し、学校と両立しながらアイドル活動を続けてきました。勉強より絶対アイドルの方が楽しいやろ!と思い飛び込んだ世界でしたが、初めて学校以外の世界に飛び込んでみて、勉強のありがたみを知ることに。

努力しても結果が出ない。
努力の仕方も分からない。
努力してもどうにもならないところで評価が決まっていく。

真っ暗な世界に放り出されて、手探りで、いつか結果が出るとも思えない世界に出てみて初めて、時間をかければある程度の結果が出た勉強のありがたさを痛感しました。

それまで勉強、部活と、苦手なことでも一生懸命やってきたつもりでしたが、決められたものをきちんとこなせば、結果が出ずとも評価してくれる環境だったから続けられたんですね。

今振り返れば、私は小、中、高と、先生や環境に恵まれた学生生活でした。

それぞれで恩師と呼べるような先生に出会い、たくさんの価値観を学ぶことが出来たし、勉強でも、苦手な運動を克服するために入った陸上部でも、ちゃんと努力を見てくれる人がいた。

ただ、学校や環境によっては、そうでない場合もあると思います。勉強が苦痛で、学校が終わって心底ホッとする方もいらっしゃるでしょう。

校区があり自分で学校を選べないことも多い上に、入学する前に先生や雰囲気も分からず、運要素があまりに大きい学校選び。

だから、学校を賛美している訳でもないですし、学校が合わなかった方を否定するわけでもありません。

自慢ではないですが、私は自分で勉強をすれば点数が取れる方で、成績は中の上くらいでした。同じ時間・同じ勉強をしても、私より点数を取れない人、取れる人、どちらもいるでしょう。

私が要領のいい方だったのか、他人よりも要領の悪いなか頑張っていたのかは分かりません。

そう思うと、全てを同じ型にはめて評価するテストの方が残酷なのか、何もかもが自由な世界の方が残酷なのか。

簡単に比べることも出来ないですが、現実は後者です。

学生だし、という心の言い訳も出来なくなって、本当にやっていけるんだろうか?

と考えると、テストがあるとしても、一生学生のままいられたらいいのになぁ。と思ってしまいます。
これ以上学費がかさむのは辛いので、さっさと卒業を目指しますが。

そしてNMB48と学校との両立も中々に苦しいものでした。

最近はNMB48メンバーの中でも大学進学を選ぶ子が増えましたが、数年前までは大学進学に厳しい目もあり、大学との両立は難しいことでした。

なので後輩たちが進学を選べる環境になったことが嬉しいですし、「それは私たちが拓いた道だぞ」と勝手に微笑んでいます。知らんけど。

1作目の小説『アイドル失格』の執筆中は仕事との両立だけで精一杯で1年間の休学を選びましたが、無事卒業目前まで辿り着けたことを誇らしく思います。

ただ、最後のテストで点数を取れなければ留年確定。卒業式で笑えるように、悔いのないよう今は勉強に励みたいと思います。

そして、学校を出てそれぞれの道を歩いている方々を心から尊敬します。

安部若菜の最近読んだ本

杉森くんを殺すには著:長谷川まりる, イラスト:おさつ/くもん出版

杉森くんを殺すには』 長谷川まりる
私が中学・高校時代に出会いたかった!と心の底から思った本です。

私がこれを読んだのは23歳。10代の時に読んでいれば、あのとき暗かった世界がもっと彩られて見えたかも、人生が少し生きやすくなったかも、と学生時代に思いを馳せました。

物騒なタイトルですが、実はこれは児童書。ライトな表現でページ数も程よく読みやすいのに、内容は大変パンチのあるストーリーでした。

「杉森くんを殺すことにしたの」

主人公のヒロのそんな言葉から始まり、ミトさんのアドバイス通り、「やりのこしたことをやっておく」「どうして杉森くんを殺すことにしたのかを考えておく」という2つを実行していくことに。

同級生と遊園地に出かけたり、杉森くんを殺すことにした理由を考えていくうちに、少しずつ変わっていく主人公の心情の細かいこと…!

難しい言葉は使わず、自分自身の気持ちも「分かんない」と悩む描写も多かったのに、その分からなさがすごく分かる…!と共感。

劇的な事件が起こる訳じゃないのに、1人の高校生の心情の変化が綺麗なグラデーションとして見えて、自分自身の心も強く揺さぶられる作品でした。

学生はもちろん、大人になった方にも、ぜひ、ぜひ!読んでいただきたい作品です。細かく調べず、出来るだけ前情報なしで見ていただきたいです。

<第12回に続く>