幼稚園に現れる幽霊を撃退!園児と保育士が幽霊退治に挑む『カヤちゃんはコワくない』【書評】
公開日:2025/2/14

『カヤちゃんはコワくない』(百合太郎/新潮社)の主人公・カヤは、幽霊が見えるだけでなく、倒すこともできてしまう幼稚園児。作中に登場する幽霊は、大人の私が何度見ても声を出してビクついてしまうほどの迫力があるが、それをカヤはあっさりと倒してしまう。
幽霊から周囲の皆を守るために、ブランコから園児を遠ざけたり、園内の本をテープで閉じて開けさせないようにしたりと、さまざまな工夫をしている。だが、事情を知らない人々からは問題児扱いされており、お目付け役としてチエ先生が常にカヤのそばにいるのだった。
チエ先生は、ブランコに取り憑く幽霊をカヤが退治した瞬間を目撃し、さらにはカヤが封印していた本を開けてしまうことで幽霊を目の当たりしてしまう。その出来事がきっかけでカヤの言動には理由があると知り、やがてカヤが幽霊絡みのトラブルに巻き込まれた際には助けるようになるのだった。
本作は現在6巻まで発行されているが、回を追うごとにカヤとチエ先生の親交が深まっていく。第1話のラストシーンで幽霊が見えたチエ先生に対し、少し嬉しそうな表情を浮かべるカヤ。その様子から、やはり幼い子どもにとって、自分にしか幽霊が見えず、他人に理解されない状況は孤独で辛いものだ。同じものを見ることができる人が近くにいることは、それだけで喜ばしいことだろうと感じる。
普段あまり感情を表に出さないカヤが、時折嬉しそうな顔を見せてくれる度にもっとさまざまな表情を見たいという気持ちが湧き起こるのだが、そのためにはカヤと幽霊の因果関係を知り、解決する必要もあるはずだ。カヤ本人、そしてカヤの母方の家系の情報を掴んでいる謎の男「モブおじさん」の登場は、その解決の糸口になる可能性を秘めているのだろうか。今後の彼の活躍に期待したい。
迫力ある恐怖シーンに震える読者も多いと思うが、その恐怖を耐え抜き、全てが解決してカヤが満面の笑みを浮かべる瞬間をどうか見届けてほしい。