第1位は『大ピンチずかん2』! ギャグ、シュール、感動作…絵本表現の多彩さを示した「第17回 MOE 絵本屋さん大賞 2024」贈賞式【レポート】
更新日:2025/2/3

書店で注目されている絵本を選出した「第17回 MOE 絵本屋さん大賞 2024」の贈賞式が、1月30日に東京都内の日本出版クラブで開催され、錚々たる顔ぶれの作家陣が登壇。誰もが知る名作の絵本版からギャグやユーモアを盛り込んだ爆笑絵本まで、多種多様な作品が授賞されました。選出したのは、全国3000人の絵本専門店・書店の児童書売り場担当者たち。その中から選ばれたベストレビュアー賞の表彰式もあわせて行われました。
最初に登壇したのは、大賞を主催した白泉社の高木靖文代表取締役社長。多くの作家や来場者を前に、祝辞を述べました。
〈白泉社 高木靖文代表取締役社長の祝辞〉
今年の受賞作は大変バラエティに富んでおり、笑ったり感心したりと心を揺さぶられました。どれも読者の気持ちに寄り添った作品ばかりだと思います。少女漫画の編集で育った私は書店のコミックコーナーに行くことが多く、残念ながら人は多くないのですが、絵本のコーナーではたくさんの方が熱心に絵本を吟味されています。これからも子どもたちが集まる絵本、大人たちがいつまでも愛し続ける絵本を応援していきたい。みなさまのご活躍を期待しております。
続いて受賞作家への表彰があり、高木社長から作家へクリスタル盾が贈呈されました。本稿では、第1位から10位までと、新人賞第1位・ファーストブック賞第1位の、各作品紹介と作家の受賞コメントを紹介します。
第1位 『大ピンチずかん2』(鈴木のりたけ/小学館)

ベストセラー絵本の第二弾。子どもが陥りやすい大ピンチを「大ピンチレベル」の順に掲載するのはそのままに、「大ピンチグラフ」を新たに採用。ドキドキ? イライラ? それともつらい? そんな6つの要素から理由を解明し、突然の大ピンチに備えられる! 期待を裏切らない、親子で大爆笑必至の一冊。
「3人の子どもに贈るサンタのプレゼントを僕が買っているのですが、この前、その中に入れていたウエハースを長男が食べていて、長女が『それどうしたの?』と聞いたら、息子が『父さんが買ったやつ』と言ってしまったんです…(会場笑)。僕にとっては大ピンチでしたが、父親の気持ちを汲んでシーンとした家族のことが愛おしくなりました。大ピンチって萎縮しがちだけど、その人たちのキュートな一面が生まれる瞬間でもあります。それを生きる推進力に変えてもらえたら」(鈴木のりたけ)
第2位 『わすれていいから』(大森裕子/KADOKAWA)
ある日、生まれたばかりの“おまえ”に出会った“俺”。気がついたら、“おまえ”がいないことが多くなって——。男の子と猫の深い絆を描いた物語には、誰かを愛おしく思う気持ちがあふれ、読む人の涙を誘います。雑誌「kodomoe」(白泉社)で「ずかん」シリーズを制作する作者が描いた、あたりまえの日常が愛おしくなるような秀作。
「小さい頃から飼い猫と過ごしてきた息子が、大学生になって家を出たことがきっかけで生まれた絵本です。会えなくてもそばにいるような存在って、きっとあると思います。誰かを思う気持ちや、相手の幸せを願う優しい気持ちを表現して作りました。長く愛される絵本になれば」(大森裕子)
第3位 『シカしかいない』(キューライス/白泉社)
漫画やアニメーションなど多彩に活動するキューライスさんの作品。公園、銭湯、レストランなど、いつも見ているはずの日常の風景が、なぜかシカだらけに! 時々、シカじゃないものも現れて!? すみずみまで眺めては、シカの表情や行動にプッと吹き出してしまうシュールな絵本。
「私たちがふだん行くような場所が全部シカで埋め尽くされている、ただそれだけの絵本です。仕事場の机の上で使っていたカレンダーが、“鹿ケツカレンダー”というシカのお尻の写真だけが載ったカレンダー。毎日鹿ケツと向き合って仕事をしていたら、ふとこんな形でシカが絵本になりました」(キューライス)
第4位 『いちごりら』(麻生かづこ:作、かねこまき:絵/ポプラ社)
表紙で肖像画のように描かれたのは…頭が「いちご」になってしまった「いちごりら」! いちごが好きなごりらさんがいっぱい食べたら、「いちごりら」になっちゃった。ほかにも、「すいか」を食べたかば=「すいかば」など、ユニークな動物たちが続々登場。インパクト大の絵とリズミカルな言葉の繰り返しで、大人も子どもも夢中に!
「私はイチゴが大好きで、そんなに食べたらイチゴになっちゃうよーというところから思いついたのが『いちごりら』。だったら、ぶどうが好きなうさぎは『ぶどうさぎだー』と、楽しく考えながら作りました」(麻生かづこ)
「デビュー前に『ギャグとユーモアの違いについて考えてみて』と言われ、その答えが何なのかを考え続けながら絵本を描いています。この絵本にもギャグがたくさん入っていますし、ユーモアもそこはかとなく滲み出ていると思います」(かねこまき)
第5位 『ちょっぴりながもち するそうです』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

ヨシタケシンスケ氏による、ちょっぴり心が軽くなる絵本シリーズ第三弾。「こまめにストレッチすると ほとぼりがさめやすくなるそうです」など、2つの出来事のふしぎな因果関係が2コマの絵で表現されています。今すぐできるような身近な描写が多く、試したらおまじないの効果があるかも!?
「いろいろな因果関係をでっち上げた“創作おまじない”を、楽しく描きました。いい加減なことを言いにくい世の中ですが、その人を幸せにできるようないい加減なこともいっぱいあります。書店が大変な時代だと聞きますが、これからも本を書く人と売る人と読む人がキャッキャ言い続けられる場所があれば、と思います」(ヨシタケシンスケ)