「食洗器の音がうるさい」で離婚寸前に!? ささいなことから破綻する夫婦関係を改善に導く一冊【書評】
更新日:2025/2/4

2022年、特殊離婚率(年間の離婚数を婚姻数で割った値)は約35%となり「3組に1組は離婚する」というフレーズを聞いたことのある方も多いのではないでしょうか? 中でも同居期間が20年以上の夫婦が離婚する「熟年離婚」の割合は昔より増えているそうです。そして熟年離婚の中でもどちらかの不貞や金銭問題など明確な理由がある離婚ではなく、ささいなことの積み重ね、いわゆる「価値観の相違」から離婚する夫婦が増えていると指摘するのが『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(岡野あつこ/講談社)です。

本書は4万件のトラブルを解決してきた離婚カウンセラー・岡野あつこ氏が、これまで接してきた夫婦のエピソードをもとに夫婦関係がこじれた本当の原因を分析。すれ違いを防ぐ、もしくは関係を修復するための方法を教えてくれる一冊です。
「食洗器の音がうるさい」で離婚、「妻がユーチューブを見てヨガ」で離婚相談……本書の見出しを読むと「そんなことで離婚!?」とあきれてしまいそうになる内容がしばしば。しかし岡野さんは実際にこの相談内容を受け、夫婦の根底にある問題を探り当てつつ解決に導いているのです。
例えば「食洗器の音がうるさい」で離婚寸前の夫婦の場合、夫は会社での立場も良く高収入で妻は専業主婦。「いつも夫が『寝ようとする時間に食洗器の音が聞こえてくるのが嫌だ』と文句を言うのがモラハラであり悩んでいる」というのが妻の主張でした。しかし岡野さんが双方に話を聞くうちに、妻側も家事の効率を良くする努力をまったくしていないことが判明。実は夫は自分より高学歴の妻へのコンプレックスからダメ出しをしていて、妻は夫を見下しているから自分の行動を改善しようとしなかった、という背景が浮かび上がってきたのです。
私自身も結婚12年目。だいたい夫婦喧嘩の火種は「夫が勝手に私のおやつを食べた」「私が出すと言っていたはがきを出さなかった」などはたから見れば「心狭くない?」と思われてしまいそうなものばかり。でもそこにはそれまでに蓄積されていたさまざまな問題があったりするんだよな……と妙に納得してしまいました。
ではなぜささいなことで爆発するまで夫婦関係がこじれてしまうのか? それは「伝え方」に問題があるからだと本書は説明。伝えるべきことを伝えていなかったり、逆に余計な一言を言ってしまっていたり。特に「普段家事や仕事を頑張っている」「相手のことを愛している」というアピールが下手な人ほど損をしているという指摘にはかなり共感。だんだん夫婦の会話が減る→相手が日中何をしてどんなことを考えているかがわからなくなってくる→「相手は家事・仕事を頑張らずにダラダラしている」「自分のことはもう好きじゃない」という思い込みが生まれ、相手を軽んじるようになる→夫婦の関係が冷えていく、という負のループが熟年離婚に繋がっていくのだと感じました。
また問題がわかったら、解決までの道標を教えてくれるのが本書。長続きするカップルがやっている「KISSの法則」、愛される人がやっている「5Sの法則」らオリジナルの法則を使うなどして、わかりやすくコミュニケーションを取る上でやった方が良いことを教えてくれます。また最終章である第六章は『「この一言」だけは絶対に言ってはいけない』というタイトルで、NGの行動・発言も具体的に解説。
最初にタイトルを読んだ印象では「妻の言動の問題点」を指摘する内容なのかと思いきや、妻側・夫側どちらにも学ぶことがある一冊。ぜひ夫婦ふたりとも読むことをおススメします!
文=原智香