【Vol.12】特別審査員 絵本ナビ編集長・磯崎園子インタビュー(後編)作者の生きている“今”を感じることができたら
公開日:2025/2/6

『第1回 読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』と合わせてスタートした連載「あたらしい絵本大賞ってなに?」もいよいよ最終回です。
vol.12に登場するのは絵本ナビ編集長の磯崎園子さん。応募締め切り日(2025年1月31日)直前とはなりますが、最後に「あたらしい絵本大賞」の目指すもの、応募を考えられている方へのメッセージなどを話していただきました。最後までお楽しみください!

磯崎園子(絵本ナビ編集長)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。
作者の生きている“今”を感じることができたら
ーー『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』について伺っていきたいと思います。まずタイトルにもなっている「あたらしい絵本」というテーマですが、正直少し漠然としていて難しいな……という印象もありますね。
そうですよね。応募方法がデジタルという規定はありますが、作品内容については自由ですし、動画部門やテキスト部門もあります。私たち主催者側も、どんな作品が集まってくるのか始まってみないとわからない、というのが正直なところです。ただ「あたらしい絵本大賞」をスタートさせた動機というのは、「絵本というものの表現の幅、楽しみ方の幅が大きく広がっていって欲しい」という願いからです。
―― 磯崎編集長の中では「あたらしい絵本」のイメージはありますか?
子どもの頃に読み親しんできた絵本を、今も新鮮な気持ちで驚いたり楽しんだりすることができる。ここに絵本の大きな魅力を感じつつも、最近の新しい作品の中で味わったことのない感覚や楽しみ方に出会あうことができた時にはすごく嬉しくなります。やはりそこには、作者の生きている「今」を感じることができるからだと思うんです。
どんな生活をしていて、どんな感情が生まれてきて、どんなことに興味があるのか。そういうものがベースになって生まれてきたものに惹かれてしまいます。それでいて、時代が変わっても変わらないものが見えてきた時、そこに更なる愛おしさを感じます。
―― そういう意味では世代によって触れてきたものも大分違ってきますよね。
だからこそ、新しい感覚で育ってきた方が生み出す「あたらしい絵本」にも期待してしまいますよね。今までの「良き絵本」のイメージと違うもの、例えばデジタルネイティブ世代が読みたい絵本はどんなものなのか。あるいは、私と同世代や上の世代の方が新しい感覚に触れた時にどんな世界が見えてくるのか、そこも楽しみです。
「あたらしい絵本大賞」をきっかけの一つとして利用してもらいたい
ーー さらに「あたらしい絵本大賞」の特徴として、デジタル応募という点や、動画部門の存在などがあります。
絵本の紹介を20年近く続けている身としては、やはり当然「紙の絵本」の大切さを実感しています。一緒に読む楽しさ、自分でめくる喜び、その重みや質感、所有することへの憧れ等々……皆さんが感じていることと同じだと思います。
けれど一方で「絵本は紙でなくてはいけない」という思い込みがあるのは、実は私たちの方なのかもしれないとも思ったんです。絵本をどんな場面で活用していくのか。どんな読み方をするのか。絵本という要素がもっと広がっていくとすると、どんな形があるのか。そこの可能性を制限してしまうのは勿体ないのかもしれない。このコンテストが、そういった可能性を探っていく第一歩になっていってくれると信じています。
ーー 具体的にはどんな作品が求められているのか。応募者としてはそこが気になるところかと思います。
作品を生み出すきっかけとしては、作者の内側から湧きあがってくるものを形にする方法もあるでしょうし、「こんな絵本が欲しかった」という出発点もあるかもしれないですよね。「絵本業界に一石を投じたい!」というような強い意思のある作品ももちろん大歓迎ですし、ありふれた日常のさりげない瞬間の中から生まれたような絵本も大歓迎です。
審査の方も、まずは傾向を決めずに、子育てに役に立つ、赤ちゃん絵本、キャラクターの登場する絵本など、普段はコンテストの大賞に選ばれにくいジャンルも含めて、フラットな視点で選んでいきたいと思っています。
ーー 締め切り直前にはなってしまいますが、最後に応募を考えられている方にメッセージをお願いします!
ある一冊の絵本の登場をきっかけに、誰かの生活に影響を与えていくことがあるかもしれません。その一冊で世の中ががらりと変わることはないかもしれないけれど、少しずつ変化を起こしていくことはあるかと思います。そんな志を持っている方々が「読者と選ぶ あたらしい絵本大賞」をきっかけの一つとして、大いに利用してもらえると嬉しいです!
―― ありがとうございました!
応募締め切りは2025年1月31日(金)、最終選考作品の発表予定は2025年4月28日(月)の予定となっています。また詳細は追ってお知らせしていきます。
文・構成: 磯崎園子(絵本ナビ編集長)
