認知症は予防できる! 早期発見&正しい方法で対策。親子でできる簡単「脳のごみ」お掃除大作戦【書評】
公開日:2025/2/11

認知症は怖い。そう思うからこそ、認知症が身近になるまでは対策や予防策を真剣に調べないという人も多いのではないだろうか。そんな認知症から距離を置いている人こそ『1日10分から始めよう! 認知症予防学の第一人者が教える脳のおそうじ体操』(浦上克哉/中央公論新社)を手に取ってほしい。認知症が心配な読者に希望を与えると同時に、発症の仕組みや予防策まで、認知症に関する情報を多角的に理解できる書籍だ。

著者は、認知症専門医であり、認知症予防の専門家として30年以上、認知症患者と向き合ってきた浦上克哉氏。認知症の発症は防げないと言われていた時代から、「認知症は予防できる」という考えのもとで研究や治療を重ねてきた著者が、実際に認知症になる人が減った鳥取県の事例や研究結果に基づいた、認知症発症リスクを下げるトレーニング方法を伝えている。
本書はまず、認知症の仕組みや、認知症の原因となるアミロイドβ(毒性のたんぱく質)などの「脳のごみ」について解説。認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の段階なら、脳のごみを取り除くことで認知機能の回復が可能であると伝えている。その具体策が、著者が勧める「脳のおそうじ体操」だ。

脳のおそうじ体操は、「運動プログラム」と「知的活動プログラム」から成る。運動プログラムの内容は、椅子に座った状態や、スペースの限られた場所でできる簡単な体操だ。その動きやコツは、写真やポイントを交えてわかりやすく解説されているため、運動や専門トレーニングの知識がない読者でも家族やMCIの人と一緒に取り組めそうだ。指定されたプログラムが困難な人向けに、「これでもOK」という簡易バージョンも示されているため安心だ。

「知的活動プログラム」は、「近時記憶力」や「視空間認知力」などの8つの脳機能をテーマにした座学のトレーニング。楽しく取り組めることを重視したと著者が言う通り、ゲーム感覚で解ける課題ばかりだ。「トランプの神経衰弱も効果的」「思考力のトレーニングには川柳や短歌、俳句もおすすめ」など、本書のプログラム以外のトレーニング方法も紹介されているため、自分たちに合った方法で取り入れられそうだ。
認知症予防策として注目されている「マルチドメイン介入」について理解できるのも本書の特徴だ。マルチドメイン介入とは、認知症予防に効果のある運動と、複数の防御因子(認知症をブロックする要因)を組み合わせる方法。そんなマルチドメイン介入の理論に基づいた、食事や睡眠などの生活習慣の改善で認知症を予防する方法も伝えている。どのアドバイスも、その行動がどう認知機能に作用するのか説明されているため納得感があり、若いうちから予防のため取り組んでみたくなる。脳に良いトレーニングや生活習慣に関する情報が満載の本書が、認知症や健康に対する自分の意識を変えてくれるだろう。
文=川辺美希