「考える人」って何を考えてるの?ハチ公は実は二代目?知れば知るほど面白い、親子で楽しめる彫刻の世界【書評】
PR 更新日:2025/2/25

その美しさを味わうだけでなく、背景にある歴史や思想を知るのも楽しい芸術作品。子どもの学びや興味の幅を広げるきっかけになる芸術を親子で楽しみたい人の背中を押すのが、本書『意味がわかるとおもしろい! 世界のスゴイ彫刻』(佐藤晃子:著、伊野孝行:絵/Gakken)だ。
世界や日本の芸術の魅力を伝えてきた美術ライターの佐藤晃子氏が、小中学生向けに彫刻の名作を解説する本書。約70作品を、由来や意味の解明が続く「謎がいっぱいの彫刻」、作品をめぐるストーリーが面白い「人の想いがつまった彫刻」、時代を映す「激動の歴史を歩んだ彫刻」という3つのカテゴリーに分けて、その魅力や楽しむポイントを伝えている。
登場するのは、ミロのヴィーナスやミケランジェロのダヴィデ像、誰もが知る彫刻から、奈良・興福寺の仏頭などの日本の仏像、1960年代のニキ・ド・サンファルのナナ像、ニューヨークの自由の女神像や渋谷駅前のハチ公像まで、幅広い時代やエリアからセレクトされた作品。著者はそんな名作の数々を、イラストレーターの伊野孝行氏によるユーモア溢れるイラストや、子ども視点の素朴な疑問や驚きの反応を交えて、楽しいトーンで紹介している。

たとえば、頬杖をついて考えるポーズでお馴染みのロダンの「考える人」は、「何を考えているの?」というアプローチでその魅力を解説している。この世界一有名な男性像は、「地獄の門」という大きな作品の一部。実はとある場所を見下ろしているシーンだということは、大人でも知らない人も多いのではないだろうか。

また、「口からなんか出てる!?」という驚きとともに紹介されるのが、京都・六波羅蜜寺の空也上人像。空也上人は、「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽往生がかなう阿弥陀信仰を広げた「念仏の祖」。わずかに開いた口から出る6つの小さな人影の正体と、空也上人の功績が明かされる。子どもは作品の裏側を知ることで、実物を見てみたくなるだろう。そのほかにも、「考えすぎでアフロ!?」「67歳でつるつる動物大ヒット」「トイレにあるやつだよね?」など、気になる見出しが目白押しで、子どもの好奇心をくすぐる。

ロダン×ミケランジェロ、定朝×運慶、高村光雲×ポンポンという、彫刻界のレジェンド3組が語り合う「妄想対談」も面白い。お互いへの賛辞や作品へのこだわり、ちょっとした愚痴を言い合う姿に、(あくまで妄想だが)彼らの人間性を感じる。これまで芸術に対して難しさを感じていた子どもも、彫刻や芸術家をぐっと身近に感じられるのではないだろうか。
本書で紹介されている彫刻を日本で観られる美術館や寺も紹介されているので、この本を片手に、子どもと一緒に彫刻と出会う旅に出かけるのもいいだろう。親子で芸術を楽しむきっかけを与えるとともに、子どもの興味の扉を開いてくれる1冊だ。
文=川辺美希