“なんとなく”で人は死ぬのか?高校生たちが抱える後悔、葛藤、痛みを描いた『声に出せずに叫んでる』【書評】
PR 更新日:2025/2/25

高校3年生で第17回小説現代長編新人賞を受賞した朝霧咲。現在京都大学二回生でもある彼女の2作目の小説『声に出せずに叫んでる』(朝霧咲/講談社)が2月12日に発売された。高校生たちの感情が繊細かつ鮮やかに描かれる青春小説であると同時に、かつて青春を経験したさまざまな世代の心にも刺さる作品だ。
本作の主人公は羽山陽介・高校2年生。7年前に母を亡くし、父と妹と三人で暮らしている。ある日、父が交際相手・金村美和を紹介し、ゆくゆくは再婚も視野に入れていると発言。以降美和は羽山家を度々訪れるようになる。すぐに彼女になついていく妹の千夏に対し、美和のことを受け入れられずにいる陽介。その理由は、母が倒れた日にあった。
母が倒れた日に起きたとある出来事を思い出しては、「もし~だったら」を考え、また傷つくことを繰り返していた。関連するものを見たり聞いたりすると、居ても立っても居られない気持ちに陥ることも。しかし、そのことを父はもちろん、友達にも言えずに、一人後悔から抜け出せずにいたのだった。
そんな陽介を取り巻くのが、高校で出会う友人たち。心臓が悪く、激しい運動ができず、時には車椅子を使わなければならないこともあるクラスメイトの西井。常に女性側から告白されるが、いつも短期間でフラれることになる黒滝。「自分に何かが欠けているからなのか…」と、フラれる理由がわからずに傷ついている。陽介と同じサッカー部の鈴木は「自分には“悔しい”という感情がわからない」と嘆き、実力があるのに部活を辞めてしまう。
そんなふうに、大なり小なり何かを抱えている人々が登場する。彼らとの出会いと交流を通じて、陽介は、この世に“普通”の人間などいないのだと感じ取っていくのだった。
それぞれ悩みを抱えながらも高校生相応の日常を過ごす中で起きる不可解な事件。友達が階段から突き落とされたり、幼馴染のイヤフォンが切り刻まれたり…。そして、ある日、近隣の高校で『なんとなく死にます』という遺書を残して女子高生が亡くなるという事件が起きる。担任とクラスメイトは「『なんとなく』で高校生が死ぬはずがない、何か原因と理由があるはず」と彼女の本心を推しはかろうとする。「きっとこうだろう」「こうであるはずがない」と思い込み、それを言葉にしてしまう…と。しかし、それは本当に彼女を知ろうという善意なのだろうか? 無意識の内に自分の中の物差しで勝手に相手を測ってはいないだろうか? SNSで何かの事件が話題に上る度に多くの人がとってしまうこの行動。端から見れば浅はか極まりないが、知らず知らずのうちに自分も似た行動をとっていないだろうか…と、本作を読んでヒヤッとした。
周囲の人々との関わりと事件が解決する過程で、徐々に変化していく陽介。点と点が線で繋がるカタルシス満載のラストは、消せない後悔を抱えるすべての人に届くものがあるだろう。タイトル通り、言葉にできずにいた気持ちを、代弁してもらえたように感じる作品だ。
文=原智香