ジェーン・スー「『いいね』の数にこだわらない。他者に自分の価値判断を預けない」50代になって理解できた「インディペンデント」な自分でいること《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/2/21

――そのために、どうすればいいのかわからない、という人にアドバイスはありますか。

スー やっぱり、まずは自分の生活を自分の手で整えていくことじゃないでしょうか。家を掃除したり、丁寧な生活をしたりする、ということだけではなくて、自分にとって不愉快のない生活をつくりあげていく。やっぱり、人って、自分を見失っている状態がいちばん苦しいと思うんですよ。私だって完璧な人間ではないから、しょっちゅう言動を間違えるし、誰かを傷つけることもいまだにないとは言えない。表には出せないような一面だって、あります。そういう自分を抱えて生きていくには、できる範囲で日々を整え、ちゃんとすることを積み重ねるしかないんじゃないのかな、と。それ以外に、前に進む方法を知らないというのもあります。私、夢も特にないですしね。

――ないんですか。

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スー 仕事で次の目標はなんですか、と聞かれることも多いけど、本当に思い浮かばないんですよ。しいて言うなら、自分の余白を持ちながら今の生活を続けていくこと。年を重ねて、たいていのことには動じなくなってきたし、生活もルーティン化してくるから、新しいことを発見するのも難しくなっていく。それでも、いやだからこそ、他者と比較せずに自分の「好き」で身の回りをかためて、楽しむことが大事になってくるんじゃないかなと思います。

――ただ、〈経験には年を重ねるごとに個々人のバイアスがかかる〉と作中で語られていたように、無意識に他人をジャッジしてしまうこともありますよね。否定や断罪をするわけじゃないけど、相手の言動を素直に受け取れない、「それってどうなの」と違和感を抱いてしまうことの怖さについての章は、かなり身につまされました。

スー 怖いですよね。自分もまた、相手に「それってどうなの」という違和感を抱かせることはあるでしょうが、誰も指摘はしてくれない。どんなに気をつけているつもりでも、自分で認識している自分と他者から見えている自分は異なるんだってことを自覚しなくちゃいけないし、なるべく自分に嘘をつかず、心と言動を一致させるふるまいを心がけるしかないよなあと思います。

――それもまた、だいぶ難しい……。

スー そうですねえ。対処法としてよく言われるのは「他人のふり見て我がふり直せ」ですが、なんだか意地の悪い言葉で、好きじゃないんですよね。誰かにされていやだったことを自分はしないようにしよう、くらいならいいですが、「あの人のふるまいはおかしいから、自分はやらないようにしよう」みたいなのって、他者のジャッジが先にある。それよりは、誰かに違和感を覚えたときにいったん、自分の心を見つめなおして「なぜ、私はそう思ったのか」と問いかけてみる、自分と違う世代の人たちの言葉をいったん受け止めるようにする、ということのほうが大事な気がしますね。

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