ジェーン・スー「『いいね』の数にこだわらない。他者に自分の価値判断を預けない」50代になって理解できた「インディペンデント」な自分でいること《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/2/21

――本書でも、スーさんがいろんな世代の方々から学びや発見を得ているコラムがいくつかありました。とくに若い世代の方々と話していて、気づかされることはありますか。

スー みんな、本当にまともだなあと思いますね。世間はすぐ、◯◯世代と名づけて、それこそジャッジしたがりますけど、そういうのはだいたい上の世代による悪口なんですよ。自分たちの時代に比べて覇気がないとか個人主義だとか、ネガティブに感じられる要素を特徴としてくっつけたがる。でも、話してみると、今の20代には私たちよりもずっと人権意識が強い人や、自分の意見もハッキリ持っている人がいる。頼もしいな、と思います。

――世の中を、冷静に俯瞰しているんだなということは、本書からも伝わってきました。

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スー 不景気の時代を生き抜くために、若い世代がそうならざるをえなかったところもあると思いますし、もちろん不貞腐れて努力を放棄する人も中にはいるでしょうけど、私の知っている人たちはみんな、意味のない見栄をはらずに、堅実に自分の夢を叶えようとしている。そういう人たちが、若さや属性を理由に不当な扱いを受けることが、私は本当に、生理的に嫌いなんだなということが本書を通じて見えてきました。未来ある人たちの邪魔を、私たちがしてはいけないし、そんな社会であってほしくないと強く思います。

――これまでスーさんのエッセイは、個人の内面を見つめるものが多かったと思うのですが、トランプ再選についても語られていたように、本書は、これまで以上に社会に目を向けたものが多かった気がします。

スー 連載媒体が『婦人公論』だったので、臆せず取り上げられた、というのはあります。読者の多くが先輩女性だとわかっているので、その知力と社会に対するまなざしを信じられたのは大きかったです。フェムテックがもてはやされているけど、なんで女性の健康に関することが厚生労働省ではなく経済産業省の管轄なんだとか、「これっておかしくない?」ということを、ざっくばらんに俎上にのせることができたので。

――他者をジャッジメントするのとはまた違う、見過ごしてはいけない社会の違和感にも一つひとつ目をとめて、怒りを示すこともまた、スーさんの言う「生活を整える」ということなのだなと思いました。

スー 若い世代に対して過保護になりたいわけじゃないし、ある程度は理不尽に対する耐性も身に着けたほうが折れずに生きやすくなるとは思うけど、若い世代が社会を信じられない状態は不健康だと思うんです。だから、できるだけ理不尽な目に遭わないための露払いをすることが、あとに続く人たちが気持ちよく歩いていけるように道を整備していくことが、私たちの役目なんじゃないかなという想いもありますね。私に整えられるのは、せいぜい半径5メートルくらいのことだけど、コツコツと納得いくところまで努力を重ねなければ、気持ちのおさまりも悪いし、何より結果がついてこない。無駄かもしれないけれど、何事も丁寧に積み重ねることが、自分のゆるぎない自信にもつながっていくのではないかな、と。

――そういうスーさんだから、みんな、信頼してあとに続こうと思えるのだと思います。「へこたれてなんかいられないぞ!」とタイトルにも勇気をもらいながら。

スー 道の先に松明を持っている人がいると、安心して歩いていける。それは私も同じで、それこそ『婦人公論』に登場する先輩方に導かれて、ときに勇気をもらって、私も日々を重ねています。第4章のタイトルにもあるように、何があっても、「それでも生活は続いていくのだから」、できるだけインディペンデントな自分で、他人の評価に左右されることなく、私自身も楽しく過ごしていけたらと思います。

取材・文=立花もも 撮影=島本絵梨佳

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