「犬はくさい靴下を愛している」「かまってほしくて仮病を使う」――コドモエのずかんシリーズ最新刊は待望の『いぬのずかん』【書評】
公開日:2025/3/6

図鑑絵本「コドモエのずかん」シリーズで、『おすしのずかん』『ごはんのずかん』などを手がける大森裕子さん。待望の最新刊は、『いぬのずかん』(白泉社)です。緻密なタッチの絵柄はそのままに、犬の生態、種類から、「犬語」「犬と友達になるには?」まで、知っているようで意外と知らない犬のすべてを紹介。単行本化にあたって「犬との暮らし」「犬の一生」も加筆されています。
案内してくれるのは、おうちに新しく犬をお迎えするという設定の先住猫たち。わんこを紹介するにゃんこの言葉のチョイスはどれも秀逸で、わかりやすい上におもしろい。よく比較されがちな犬と猫の違いについても随所でふれられています。ゆたかな犬の表情を見ているだけで幸せな気持ちになれるし、読むと大人も子どもも犬博士になれてしまう。犬好きはもちろん、犬を飼ってみたい人にもおすすめの一冊なのです。
犬は汗の匂いで飼い主の気持ちがわかる

言葉を投げかけると理解したように行動するし、何も言わなくても気持ちを感じ取って寄り添ってくれる。そんな犬が大好きなのですが、犬は本当に人の言葉や気持ちに反応しているようです。本書によると、1000個以上の言葉がわかる犬もいるし、そもそも飼い主の悲しみに寄り添おうとするのが犬の習性だとか。それもこれも、どんな動物よりも強く人間とわかりあいたいと思っているのが、犬だというのです。飼い主大好きだからこそ、「かまってほしくて仮病も使う」…。そんな一面も憎めないところ。
犬に人の気持ちがどうしてわかるのかというと、その理由のひとつは「匂い」。飼い主の汗の匂いでその時の気持ちがわかるそうです。なんと、犬の嗅覚は人間の1000~1億倍。いやいや、1億倍って…。本書によれば、犬は「くさい靴下を愛している」そうで、1億倍の嗅覚のよさで鼻がひん曲がるのではないかと心配です。それはさておき、匂いで飼い主の気持ちがわかってしまうとは。人同士でも相手の気持ちはなかなかわからないものですから、人間たちよりも犬のほうが人の気持ちに敏感なのかもしれません。
楽しい時の「笑っているみたいな顔」は人間のマネ!?

つくづく驚かされるのは作者の画力です。本書の制作にあたってたくさんのわんこ&飼い主を取材したらしく、甘えた顔や首を傾げた姿など愛らしい姿がたくさん。ちなみに、犬が楽しい時にする「笑っているみたいな顔」は人間の笑顔のマネかもしれない、とのこと。人に寄り添うための犬ならではの処世術だと思えば納得できるし、健気だな…と愛おしくなります。ほかにも、あくびをする犬のちょっと気の抜けた表情、自分からおすわりした時のドヤ顔など、細かく見ていくとキリがないほどみんな可愛いのです。
色鉛筆で一本一本描き上げられた彼らの毛並みにも注目を。犬の種類が紹介されたページを見れば、種類によって毛並みがどれも違っていて、その緻密さは一目瞭然。よく目を凝らすと、足の形や目の輝き、ヒゲの曲がり具合などもちょっとずつ違う。犬への愛情なしでは描けないであろう丁寧な描写。1匹1匹をじっと見つめると犬への愛情が1億倍増します。
犬と人間は、求め、求められる存在
それはそうと、犬ほど種類によって姿が違う動物はいないらしく、それは人間と暮らす中で人間が求める役割にあわせて改良されてきたからだといいます。トイプードルは人間に可愛がられるために改良された犬で、祖先は水辺で鳥を回収していた。牧羊・牧畜犬であるウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、後ろから牛のかかとを噛んで群れをまとめていた。あまり人の手が加わっていない原始的な犬のうち、犬の祖先であるオオカミにいちばん近いのは柴犬(彼らはツンデレでもある)。犬の種類にもルーツがあるなんて興味深いですね。
ただ疑問に思うのは、彼らの祖先であるオオカミも、犬のように人間とわかりあおうとしていたのか、ということです。犬は人間と関わり合いながら改良されていく中で、次第に人の言葉や気持ちを理解するようになったのでしょうか。動物を人の手で改良することには複雑な気持ちもありますが、犬たちが歩んできた長い歴史の中には、人間がなくてはならない存在だったことがよく伝わってきました。
昔から人は犬を求めてきたし、犬のほうも人を頼ってきた。それは今も同じで、犬はきっと飼い主のことが何よりも大事だろうし、人だって、可愛いわんこなしでは生きていけない! 犬を飼う時、犬に接する時には、彼らのあつ~い愛情をしっかり受け止められる存在でいなければ、と気が引き締まります。これから犬を飼う人は「犬と友達になるには?」のページも参考にしたいところ。犬に近づく時は「あくび」をするといいそうですが、それはなぜか!? その理由は本書をチェック。
文=吉田あき