子どもの脳の成長期には自尊心が大切! 親が言葉で愛を伝えることが重要な理由/子育てのトリセツ
更新日:2025/3/14
子育ては思い通りにいかないことの連続で、心身ともにいっぱいいっぱいになってしまうこともありますよね。
そんな時に手にとってほしい、人口知能や脳科学の専門家で、生き方の指南書が好評の黒川伊保子氏による子育て本『子育てのトリセツ 母であることに、ときどき疲れるあなたへ』をご紹介します。
失敗を怒らない、対等に付き合う…黒川氏自らが子育てで実践し、脳科学の裏づけをもとにした目からウロコの子育て法。妊娠中の人、思春期の子どもがいる人、子離れ中の人…子育てのあらゆる段階に役立ち、「一般的」とされている育児の常識を、最新の脳科学と自身の実体験で覆します。
※本記事は書籍『子育てのトリセツ 母であることに、ときどき疲れるあなたへ』(黒川伊保子/ポプラ社)から一部抜粋・編集しました

母であることに、ときどき疲れるあなたへ』
(黒川伊保子/ポプラ社)
生まれてきても、よかったの?
私の父は、息子に夢中だった。私の弟である。
弟は美形で、頭もすこぶる良かった。私は、2歳違いの弟に、オセロやカードゲームで勝てたことがない。幼いときの2歳差は、圧倒的なアドバンテージなのに。父の期待が、弟に集中したのも無理はない。
そもそも父は、母のお腹に私がいるとき、「女のような無駄なものが、俺に生まれるわけがない」と豪語して、男の子の名前しか考えず、「女の子だったら、どうしよう」と母を困惑させたらしい。その不安通りに女の子が生まれて、父は泡をくったらしいが、どうやら期待は第二子に回して、「どうせ嫁に行く女の子」はかわいがることに決めたらしい。私には、ひたすら甘い父だった。弟は、すべての期待を背負うことになり、彼なりに過酷だったと思うが、私は私で、父にとって必要なのは弟だけだと思って育った。
その父が、私の息子が生まれたとき、「おまえが生まれたときを思い出すなぁ」としみじみと言ったのだった。「初めての子だったから、何もかもが鮮明だ。本当に嬉しかったなぁ」
「お父さん、私が生まれて、嬉しかったの?」と思わず尋ねた私に、「当たり前だろう」と父。
私はびっくりして、それから胸がいっぱいになった。私の脳の中では、オセロゲームの終盤の大転回みたいにパタパタと、何でもない記憶が愛の記憶に変わっていく。無関心なのではなくて、おおらかにゆるしてくれたのだ。あのことも、あのことも。
ことばとは、本当に不思議なものだ。父が愛を伝えてくれたおかげで、私の30年の人生が、あらためて愛で包まれた。
母に聞いてみたら、「あ〜、お父さんね、生まれる前はあんなに男の子しか要らんと騒いだくせに、生まれてみたらかわいかったらしくて、やっぱり持つなら娘だ、とか言って自慢して歩いてた」と言う。だったら、そこまで言ってよ、と、心の中でつぶやいた私。女の子は要らないと母を不安に陥れた話しか聞いたことがなかったのだもの。母にしてみれば、これだけ甘やかされているんだから、そこはわかってるでしょ、ということだったらしい。
いや、ぜんぜん、わからなかった。
というわけで、息子をかいなに抱いた私は、「愛は、やっぱりことばにしなきゃ伝わらない」としみじみ思ったのであった。
赤ちゃん期に、目の前の柔らかい筋肉の動きと温かい息と共に与えられたことばは、脳の深層に残る。だから、今この時点で意味を理解しなくてもいい、と私は思った。かくして、私が明日死んでも母の愛が残るように、私は生まれてすぐの息子に愛を語ることにしたのである。
愛のことばは、いつから始めてもいい
愛を伝えること。――それは、生涯、子を支えることになる。
生まれてすぐからをお勧めするが、いつからだって間に合う。31歳の子持ち娘だって、父親があらためて愛を口にすれば、人生が変わったのだ。脳が変化期にあたり、各種機能の整合性が悪くて誤作動するので、本人の目論見どおりに動かないのだ。このため、脳は自分自身への信頼を失い、自己肯定感が地に落ちる。この時期、親の愛のことばと共にいれば、かなり楽に過ごせる。親は愛を伝えなければならない。
特に13歳から15歳までの子ども脳からおとな脳への移行期は、脳が不安と困惑の中にいる。