暴力団・半グレに続く、新たな悪いヤツら「トクリュウ」とは。デジタルを駆使し、顔を見せない犯罪者たちによる最新型犯罪の実態【書評】
PR 公開日:2025/3/13

闇バイトや特殊詐欺など近年、世間を騒がす犯罪にはSNSや匿名通信アプリが絡んでいることが多い。そうした脅威から自分や家族の身を守るには、どんな対策をすればいいのだろうか。
『匿名犯罪者-闇バイト、トクリュウ、サイバー攻撃』(櫻井裕一、高野聖玄/中央公論新社)は、そんな不安を抱く今だからこそ役立つ一冊だ。著者の櫻井裕一氏は、警視庁で暴力団担当刑事として長らく勤務。高野聖玄氏は、サイバーセキュリティのスペシャリストだ。
本書では強盗や特殊詐欺、サイバー犯罪などを通じて収入源を得ている「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の実態を詳しく解明している。
従来、警察にとっての組織犯罪は暴力団が典型的であった。だが、1991年に制定された暴力団対策法や2010年以降に全国の自治体で相次いで制定された暴力団排除条例により、構成員は大きく減少した。
その後、特殊詐欺で資金を獲得する「半グレ」が登場すると、警察庁は関東連合などの半グレ集団を「準暴力団」と規定し、組織犯罪対象として厳重に取り締まった。その結果、半グレの活動にも一定の制限が設けられるようになったのだ。
そんな中、新たな脅威となっているのが、縦や横の繋がりが一切ない犯罪グループ「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」だ。トクリュウの特徴は、緩やかな結びつきで離合集散を繰り返すこと。暴力団や半グレとは違って、メンバー内には人間関係が介在していないのだ。
加えて、メンバーはメッセージの自動削除機能がある匿名アプリなどを使って連絡を取り合い、自分たちの存在を匿名化・秘匿化する。そのため、警察は組織上層部への捜査が困難になる。
例えば、2022年から2023年にかけて国内で相次いで起きた広域強盗事件(通称:ルフィ事件)は、トクリュウによるものだ。著者らいわく、トクリュウの中核メンバーの多くは暴力団や準暴力団との結びつきが強いそう。暴力団は、明確な関係は持たないものの自分たちの得意分野を駆使し、トクリュウを守ることで資金源を得ている。そして、トクリュウの中核メンバーは、暴力団に組み込まれたくないものの対峙できる実力が自分たちにはないと理解しているため、資金源となることで身を守ってもらっているのだとか。
このように両者は複雑な関係性で繋がっているため、警察は組織の背後にいる暴力団までたどり着くことを最大の使命としている。
本書では、株式市場での仕手戦(※特定の企業の株を違法に操作して、価格を大きく変動させることで利益を得ようとする手法)を収入源にするトクリュウのリアルな実態も紹介。悪質なホストやホストクラブが売掛金の回収を目的に、トクリュウを頼るケースもあると指摘する。
こうした“匿名の犯罪者”は身近なところにいる。例えば、手軽に開けるSNSだ。SNSには闇バイトや詐欺行為に関与している「闇アカウント」と呼ばれるものが存在することは周知されつつあるが、どのように闇アカウントが開設されているかはあまり知られていない。
実は、闇アカウントの中には実際に存在している人物のSNSアカウントを乗っ取り、ダークウェブなどのサイバー闇市場で売買されたものも多いそう。乗っ取った本物のSNSアカウントを使うと、ターゲットは警戒心を抱きにくいからだ。
著者らは、闇アカウント問題にもトクリュウが関わっていると警告。本書ではサイバー詐欺に遭遇した時の具体的な対処法や犯罪者を遠ざける防犯対策なども学べるので、ぜひ一家に一冊備えてほしい。
スマホの普及やSNSの複雑化が進んでいる今は、テクノロジーとの関わり方を家族と一緒に見つめ直すことも身を守ることに繋がる。本書との出会いを機に、新たな脅威との向き合い方を大切な人と話し合ってほしい。
文=古川諭香