江戸城で尾長鶏「家康」の密室殺“鳥”事件が発生! ミステリー作家・森晶麿の激ヤバ小説が読める投稿サイト「ネオページ」とは【インタビュー】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/3/17

撮影協力:WeWork KANDA SQUARE

 徳川家康の生まれ変わりとされる尾長鶏「家康」が、江戸城の深奥にある鶏舎「鳥奥(ちょうおく)」で首を切られて殺害された。幕府の重臣たちは替え玉を立て、秘密裏に事態を収めようとするが、その裏には不気味な陰謀が渦巻いていて……。

 徳川家将軍や天草四郎、怪鳥・火喰鳥、鶏に転生した歴史上の英雄らの思惑が絡み合い、奇想天外なバトルを繰り広げる転生×ミステリー×歴史×バイオレンス小説『鳥奥―CHO-OKU― 大江戸火喰鳥事変』(以下『鳥奥』)。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(早川書房)、『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』(PHP研究所)で知られるミステリー作家・森晶麿さんがリミッターを解除し、持てるすべてを注ぎ込んだ怪作となっている。

 この作品が連載されているのは、小説投稿プラットフォーム「ネオページ」。投稿サイトとしては後発ながら、読み手と書き手双方にとってうれしい機能が充実している。その特徴、この媒体での連載を始めた理由について、森さんと「ネオページ」の立ち上げにも関わっている担当編集者・伊丹祐喜さんに語っていただいた。

編集者と二人三脚で執筆できる小説投稿プラットフォーム

森晶麿さん(左)と伊丹祐喜さん
撮影協力:WeWork KANDA SQUARE

――まずは、小説投稿サイト「ネオページ」のコンセプト、発足経緯について教えてください。

伊丹祐喜さん(以下、伊丹):小説投稿プラットフォームはいろいろありますが、どれも投稿作品のジャンルが極端に偏っていると感じていました。例えば男性向けなら異世界転生ファンタジー、女性向けなら異世界恋愛ものが中心ですよね。ですが、SFやホラー、ミステリーにも面白い作品はたくさんあるはず。人気ジャンル以外も発掘したいという思いから、「SF」「歴史・時代」などさまざまなジャンルでランキングを設定し、お気に入りの作品を見つけやすくしました。

小説投稿サイト「ネオページ」のランキングページ

 また、書き手にとっても便利な機能を搭載しています。小説を書き始めるとさまざまな壁にぶつかりますが、「編集サポート」ボタンを押せば、いつでも編集者を呼び出してチャットで相談できます。

 さらに、契約作家制度を設けているのも特徴です。5万文字以上執筆した方が契約作家になると、文字数に応じて原稿料が支払われます。この原稿料だけで生活するのは難しいですが、アルバイトに費やしていた時間を少しでも執筆にあてていただけたら。

 契約作家になると専属の編集者もつき、二人三脚で執筆を進めることができます。ひとりでマラソンしているところにコーチのように伴走し、「がんばれ」「もうちょっと足を上げよう」とアドバイスを送っています。

――森さんと伊丹さんは、これまでにも『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』をはじめ、数々の作品でタッグを組んできました。お付き合いも長いそうですね。

森晶麿さん(以下、森):デビュー前、僕がPHP研究所に飛び込み営業をかけたんです。その時、対応してくれたのが伊丹さん。「本の装丁、マンガ家の斡旋、何でもやります」と言ったら、その日に仕事をくれて、そこからマンガの脚本・構成などをやらせていただきました。

 その後、「ラノベの部署ができたので、企画があったら持ってきて」と伊丹さんに言われ、『奥の細道』のファンタジー小説を提案したら「企画が通りました」と。ですが、見せられたのは『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』(以下『~オブ・ザ・デッド』)というゾンビホラー。「これがデビュー作になるのか……」と悩みましたが、やるしかないと思って執筆しました。

 そのさなかに、アガサ・クリスティー賞の創設を知り、昔の原稿を引っ張り出して応募したんですよね。『~オブ・ザ・デッド』のゲラができ、書店巡りを始めた頃にクリスティー賞の発表がありました。

伊丹:確か、千葉県船橋市の書店に行った日ですよね。

:そうです。僕はそこからアキバのメイドカフェに行きました。

――え、メイドカフェがお好きなんですか?

:いえ、最終選考の結果が出るまで落ち着かなくて、生まれて初めてメイドカフェに行きました。でも、「注文の際は『にゃんにゃん』とお声がけください」と言われて。「絶対言いたくない」と、注文すらできませんでした。ちょうどそこに、受賞の電話がかかってきたんですよね。上機嫌で「にゃんにゃん」と注文しました。

伊丹:メイドさんにお祝いしてもらったんですか?

:はい。ぎこちなく「ああ、それは……おめでとうございます」って。でも、それ以来、メイドカフェには行ってませんね。一生行かないと思います。

編集者と共犯関係を築く

撮影協力:WeWork KANDA SQUARE

――その後も、森さんと伊丹さんはブログをベースにした『虚構日記』、『東京・オブ・ザ・キャット』、ジュニア小説『放課後のジュラシック』を手掛けてきました。森さんにとって、伊丹さんという編集者はどのような存在ですか?

:悪友です。同じアイデアを話しても、ある編集者には響きますが、他の方には響かないことがありますよね。僕自身は、いろいろなことに関心がありすぎるので、いろいろなアイデアを編集者にぶつけて、相手が関心を持ってくれたものを書くようにしています。そうやっていわゆる”共犯関係”を作っておくと、たとえ結果が伴わなくても、お互いに「いやー、面白いと思ったんですけどね」となりますから。

――伊丹さんとのタッグで生み出した小説は、ひときわ尖った作品が多いですよね。

:どうかしちゃってるゾーンに入っていますよね。でも、それも僕なので。僕は13年前に『黒猫の遊歩あるいは美学講義』でデビューして、それと前後するように『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』が刊行されました。男女のバディが日常の謎に挑む『黒猫~』と、ゾンビものの『~オブ・ザ・デッド』をほぼ同時期に出したので、(読者からの)「何なんだこいつは」という印象を拭えなかったんですよね。10年かけて、ようやくその溝が埋まり、今はいい状態になってきたなと思います。