江戸城で尾長鶏「家康」の密室殺“鳥”事件が発生! ミステリー作家・森晶麿の激ヤバ小説が読める投稿サイト「ネオページ」とは【インタビュー】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/3/17

動物園で見たヒクイドリに魅せられて

撮影協力:WeWork KANDA SQUARE

――そんな中、今回の「ネオページ」で連載が始まった『鳥奥』は、また思い切った作品です。アマチュアの投稿者が大半を占める「ネオページ」で、プロとしてすでに十分なキャリアのある森さんを起用したのはなぜでしょうか。

伊丹:もともとプロの作家さんにも参加していただきたいという思いがあったんです。出版社ではなかなか通りづらい企画、ずっと温めてきた企画をこの場で書いていただけたら、と。そこで森先生に『~オブ・ザ・デッド』の続編を依頼したのですが、蓋を開けたら『鳥奥』に(笑)。

:『~オブ・ザ・デッド』の続編では、間口が狭いなと思ったんです。続編を書いてみたい気持ちはありましたが、今じゃない、と。

――今回の連載に向けて、一から立ち上げた企画なのでしょうか。

:はい。伊丹さんからお声がけいただく少し前に、動物園でヒクイドリを見たんです。「ヒクイドリ、かっこいいな」と思ってネットで動画を漁っている頃で、頭の中には火喰鳥しかなかったんですね。この思いを受け止めてくれるのは、伊丹さんしかいませんでした。

伊丹:森先生からその話を聞いて「ヒクイドリって何だろう」と僕も動画を見たところ、「え、かっこいい!」となって(笑)。森先生がどう料理するのか、興味が湧きました。

:ヒクイドリって、現代では珍しい容姿の鳥ですよね。見た目がほぼ恐竜のままで。

 実際、江戸時代にヒクイドリが献上されたという記録もあるんですよ。「江戸にこれがいたんだ」と情景を思い浮かべたらワクワクして。それに関連して、なぜオランダ人は鎖国中でも貿易できたのか調べたら、キリスト教を布教しないと約束したからなんですよね。「宗教と切り離してでも取引したい」と国益を優先するオランダの軽さって、今の現代人にもつながるところがあると思いました。

 僕の勝手な定義では、「ライトノベル」の「ライト」=「軽さ」なんです。時代ものを書きたいけれど、重たいものは書きたくない。オランダ人の精神を取り入れれば、生きることの重さを感じさせない低脂肪の小説になるのではないかと思いました。

――そこから大奥の奥に「鳥奥」という鶏舎があるという発想に至るには、もう一段飛躍があるように思います。どのような発想で「鳥奥」が生み出されたのでしょうか。

:鳥なら江戸城にもすんなり入れると思ったんですよね。鳥になれたら、江戸城であってもあっさり謀反が起こせるんじゃないかと。それを企むのが普通の鳥ではなく、ヒクイドリだったらかっこいいじゃないですか。一般的な時代小説のように、きちんと時代考証するのではなく、歴史を歪めるような自由奔放なものを書きたいという気持ちがあり、ヒクイドリに活躍してもらおうと思いました。

プロ・アマ混在するサイトで、戦えるコンテンツを作れるか

――まだ連載中ですが、エンタメ全部入りのような贅沢な作品ですよね。冒頭で「密室で鳥が殺される」という魅力的な謎が提示され、転生、伝奇、バトルアクションなどさまざまな要素が盛り込まれています。

:実は1、2年前から小説の書き方を変えたんです。ミステリー作家という看板は変えず、ミステリーをベースに盛れるだけ盛っちゃおうという考えになりました。現代人はジャンク飯が大好きですよね。チーズもタバスコも「こんなに!?」というほどぶっかけて、B級でもとにかくお腹いっぱいになってほしいという思いで書いています。

――前作『名探偵の顔が良い 天草茅夢のジャンクな事件簿』(新潮社)も、盛り盛りでしたね。

:その前の『切断島の殺戮理論』(星海社)もそうです。ちょっと死にすぎなくらい人を消しまくった本格ミステリーですが、その辺りからストッパーを外すようになりました。

 そもそも僕は、デビュー作『黒猫~』のように「男女がキャッキャウフフするバディもので、うんちくを交えた日常の謎」を求められることが多くて。それ以外の作品に挑戦しても、スルーされていました。そんな中、星海社が「令和の新本格ミステリ・カーニバル」というシリーズを始め、そこに加えていただいたことで初めて新本格ミステリーファンが僕の作品を読んでくれたんです。ちゃんと出すべきところで出せば反応があるとわかったので、そこからはもう振り切ろうと。ただ、考えてみたら『~オブ・ザ・デッド』もそうだったので、最初に戻っただけなのかもしれません(笑)。

――Web連載に挑戦されるのは、今回が初めてですよね。そこに抵抗はありませんでしたか?

:僕は、新しいことにはあまり抵抗がない人間なんです。「文学フリマ」(作り手が自ら作品を販売する文学作品展示即売会。通称・文フリ)にも参加していますし、むしろ今までと違う形の仕事は大歓迎です。

 しかも、ちょうど息子が「ブラジルでサッカーをする」と言い出して、実際ブラジルに行ったんですね。高校まで一度もサッカーをやっていなかった人間が、公園で野良サッカーを始めて、その流れでブラジルまで行く。息子がそういう挑戦をしている最中だったので、自分も新しいことに挑戦したくて。

――息子さんの話も興味深いですが、それはさておき……。お子さんに刺激されて、プロとアマが混在するWeb小説投稿サイトでの連載を決めたわけですね。

:最近、息子のようなドキドキ感を味わっていないなと思って。やっぱり一度プロの作家になると、無名に戻るのが怖い気持ちも出てきます。でも、「文フリ」に出展した時も、ファンの方々がひとしきりブースに来たあとは、プロもアマチュアも関係ない状態になってくるんです。そこで戦うのは、自分ではなく自分が書いた冊子。「Web小説投稿サイトで連載しませんか?」と言われた時に、そのヒリヒリ感が蘇った気がしました。ひとりのWeb小説作家としてサイト上に並べられた時、そこで戦えるだけのコンテンツを作れるか、僕を知らない読者に読んでもらえるのか、書籍を作る時とはまったく違う楽しさを感じています。