春が待ち遠しくなる植物の絵本(2025年2月 新刊&おすすめ絵本)
公開日:2025/3/13

うぅ、さむ~い!肩をすぼめながらふと見上げた桜の木には、枝の合間に小さくふくらんだつぼみが。道端の草に目をこらすとほんの少し顔を出している若葉が。まだコートやマフラーが手放せない真冬でも、寒さを堪えながら着実に春への準備をすすめる植物たち。その健気な姿にささやかな力をもらいます。
ご紹介するのは、春に顔を見せる植物たちが登場する絵本。
はるだ、はるだ! 冬眠から目を覚ました10ぴきのかえるが野原の仲間たちに元気にごあいさつ。『はるだ はるだよ! 10ぴきのかえる』はワクワクに満ちた春が明るいタッチで描かれた人気シリーズです。春の野原を観察してみるとタンポポ、ナズナ、レンゲにヨモギと草花でいっぱい! 身近な自然を描いた『いぬのにっちゃん はるとなつ』を読んだら本を片手に野原に出かけたくなっちゃう。
子ども自身が自分の家の庭をつくる『庭をつくろう!』やバラの栽培にチャレンジする『レイチェルのバラ』からはガーデニングの楽しさや喜びが伝わってきます。
陽だまりの中にいるような、あたたかな植物の絵本。待ち遠しい春はもうすぐ、ですね。
春だ!冬ごもりはおしまいだ!目を覚ました10ぴきのかえる、野原の仲間にごあいさつ。大いびきが聞こえる穴を見に行くと……『はるだ はるだよ! 10ぴきのかえる』

はるだ はるだよ! 10ぴきのかえる
作:間所 ひさこ
絵:仲川 道子
出版社: PHP研究所
出版社からの内容紹介
困難に負けない勇気と希望、仲間と協力することの大切さを教えてくれる、読み聞かせにぴったりの「10ぴきのかえる」シリーズ。
冬の間、地面の下のふゆごもりハウスで眠っていた10ぴきのかえるが、目を覚ましました。
「はるだ、はるだ! ふゆごもりは おしまいだ!」
10ぴきのかえるは、ちょうちょうさんやかたつむりさん、どじょうじいさんに元気よく挨拶をします。野原へ行くと、たんぽぽやつくしんぼを見つけ、ふゆごもりから目を覚ました他のかえる達も出てきました。
みんなで、まだ寝ているかえるを起こそうと崖の下までいくと、穴の中から、おおいびきが聞こえてきました。ねぼすけがえるがいると思った10ぴきのかえるは、「はるだよ、はるだよ、おきなさい!」と声をかけますが、いくら呼んでも返事がありません……。すると、ぬうっとこちらを向いてきたのは……!?
テンの家を訪ね、ともだちの家に行くという手紙を見つけたネズミ。『ともだちって だれのこと?』モグラ、タヌキ、ウサギ?ぼくが「ともだち」じゃなかったの?

ともだちって だれのこと?
作:岩瀬 成子
絵:中沢 美帆
出版社: 佼成出版社
みどころ
いちばんの仲良しだと思っていたのに。
ちょっとしたことがきっかけで、なんでこんなにも不安になってしまうのでしょう。
あんなに自信満々だったのに、突然、相手の考えていることがわからなくなって、胸がざわざわして落ち着かない。そうなると、ますますいろいろなことを考えすぎて・・・。
この絵本のネズミもそう。
友だちのテンの家にあそびにいくと、テンは留守でした。
ドアの貼り紙には「ともだちのうちにいくのでいえをるすにします」と書いてありました。だから、ネズミはなんの疑いもなく、いちばんの友だちの自分の家にテンが遊びにくるのだと思いました。
走って家に帰って、テンを待ちます。
でも、テンは姿を現しません。
その時、ネズミははじめてテンのいう「ともだち」は自分じゃないのかもしれないと傷つきます。じゃあ、だれがテンのいう友だちなんだろう。森に住むほかの仲間たちのことを想像しながら、ますます不安になるネズミ。ネズミはいてもたってもいられなくなってテンを探しにいくのです。
児童文学作家の岩瀬成子さんは、子どもの繊細な心の揺らぎを丁寧に汲み取った作品を数多く世に送り出しています。優しい言葉でネズミの気持ちを代弁してくれます。今回初の絵本作品となった中沢美帆さんが絵を担当。それぞれの生活を大切に営む動物たちとその暮らしを支える静かな森を温かく描いています。
ネズミは、テンに出会えたでしょうか。テンがいう「ともだち」は誰だったのでしょう。
読み終わったあと自然と優しい気持ちになり、友だちに会いたくなる素敵な絵本です。
春、バンジャマンが引っ越した家には荒れ放題の広い庭が。『庭をつくろう!』子どもの庭づくりの一年を描いた絵本、ガーデニングがしたくなる!

庭をつくろう!
著:ゲルダ・ミューラー
訳:ふしみ みさを
出版社: あすなろ書房
出版社からの内容紹介
春、バンジャマンの引っ越してきた家には、広い庭がありました。
でも、ながいこと空き家だったので、庭はあれほうだい。まるでジャングルみたい!
すてきな庭をつくるには、どうしたらいいのかな・・・?
庭に咲いた一輪の花にうさぎの心がおどりだす『ルンラン ルンラン』ハモニカにのったメロディーは広がっていき……思わず口ずさんでしまう幸せのリズム

ルンラン ルンラン
作:PEIACO
出版社: 世界文化社
出版社からの内容紹介
ルンラン、それはこころがおどる おと
・思わず口ずさみたくなる「ルンラン」のリズムが心地よいお話。
・ルンランのリズムにのって、ちいさなしあわせはきっとどこまでもつながっていく──PEIACO(絵本作家・イラストレーター)
「ルンラン、それは心がおどる おと」うさぎの庭に咲いた一輪の野の花が、うさぎの心を躍らせ、ハモニカのメロディーをうみだし、鳥を空へまいたたせます。ルンランはどこまでも広がっていき……。思わず口ずさみたくなる「ルンラン」のリズムにのせて、小さなしあわせがつながり、広がる物語。
タンポポ、ナズナ、レンゲにヨモギ、野原は草花でいっぱい!春から夏にかけての植物や生きもの、身近な自然を楽しむ観察絵本『いぬのにっちゃん はるとなつ』

いぬのにっちゃん はるとなつ
作:秋草 愛
出版社: パイ インターナショナル
出版社からの内容紹介
身近な自然を楽しむ絵本
花が咲きみだれ、たくさんの生き物たちがいきいきと活動する春から夏の季節には、自然のドラマがいっぱい! いぬのにっちゃんやねずみくんと一緒に、身近な自然を思いきり楽しもう! 巻末に、植物や生き物の豆知識を解説した図鑑さくいん付き。おもしろい自然の知識がいっぱいの自然観察絵本です。
花が咲き、小さな実がなり、カメに漬けられ……日本人の食卓のお友『うめぼしさん』ができるまで!リズミカルな文と懐かしさわきたつ貼り絵も魅力

うめぼしさん
文:かんざわ としこ
絵:ましま せつこ
出版社: こぐま社
みどころ
おにぎりの定番具材梅干し。
見るだけで、口の中が酸っぱくなって、ヨダレが出てきて、
食べると、大人も子どももお年寄りも、みんなしわくちゃな顔になる、
日本人に最も身近な食材です。
でも、梅干しがどうやってできるか、知らない人も多いと思います。
そんな時には、この絵本。
梅の花が咲いて、小さな実ができ、塩漬けされて、天日干しされて、漬けられて、
立派な梅干しになるまでを「うめぼしさん、うめぼしさん」と語りかけるような文章で教えてくれます。
文章を彩る絵は、どこか懐かしさを感じる、和風のタッチ。
小さな実のときは母親に守られている赤ちゃんのような幼い表情が
次第に若者のようなハリのあるヤンチャ顔になり、
おひさまとにらめっこをして少しずつしわが増え、
最後は優しい成熟した梅干しになる…。
ましませつこさんの描く、梅干したちは、
どこか人間のような親しみと愛嬌が感じられます。
中でも特にオススメなのは色っぽいシソの葉姉さんの登場で、
ぽっと赤くなる初心な梅干したち。
妙に色っぽいシソの葉姉さんの流し目もみどころです。
雪深い森、冬眠中の動物たちはふと目を覚まして、はなをくんくん。春の気配に誘われ……坂本美雨さんの優しい語りで楽しむ名作『英日CD付 英語絵本 はなをくんくん THE HAPPY DAY』

英日CD付 英語絵本 はなをくんくん THE HAPPY DAY
著:ルース・クラウス
絵:マーク・シーモント
訳:きじま はじめ
朗読:坂本 美雨
出版社: ラボ教育センター
出版社からの内容紹介
ゆき深い森の中,ねむっている動物たち。
春の気配を感じて目をさまし,はなをくんくん,かけだします。
こどももおとなも春がまちどおしくなる絵本を,坂本美雨さんのやさしい英語と日本語で。
英語絵本1冊に,英語・日本語の朗読CD1枚と日本語対訳ガイド付属。
上から見れば黒紫に、チョウから見上げると燃え上がる赤色に。自身が愛したうつむくように野に咲く春の花と自然の営みを描いた『宮沢賢治の絵本 おきなぐさ』

宮沢賢治の絵本 おきなぐさ
作:宮沢 賢治
絵:陣崎 草子
出版社: 三起商行(ミキハウス)
出版社からの内容紹介
かの今江祥智氏から「白眉である」と称され、多くの画家の絵筆を動かし、子どもから大人まで、賢治作品との新たな出会いを創り出す話題のシリーズ。
うずのしゅげと呼ばれることもあるという野に咲く可憐な花の物語。うつむくように咲くその花を、上から見れば黒紫に見えるのが、蝶から見ればお日様の光を透かして燃え上がるように赤くなる。様々に変幻していくこの花を賢治はこよなく愛していた。
プレゼントのバラの花束がしおれたのをきっかけに、苗木を育てはじめたレイチェル。めぐる季節の中で花と暮らす歓びに満ちた一冊『レイチェルのバラ』

レイチェルのバラ
作:カレン・クリステンセン
絵:バーナデット・ワッツ
訳:八木田 宜子
出版社: 西村書店
出版社からの内容紹介
レイチェルの家に、おばあちゃんがあそびにきました。レイチェルへのプレゼントは、バラの花たばです。ママにいけかたをおしえてもらって、毎日大切に見守ります。ところがある朝、花びんがなくなっていて…。