「北村匠海くんに『すげー映画だね!』と興奮しながら握手しました」映画『悪い夏』原作者・染井為人×脚本家・向井康介×監督・城定秀夫 鼎談で明かされる撮影秘話

エンタメ

公開日:2025/3/25

「このキャストとスタッフじゃなければこんなにいい映画にはならなかったと思う」(城定秀夫)

まず好きな俳優が出ている映画の原作本を読む。そこから小説もいいと思ってもらえたら嬉しい

――普段、皆さんが小説や映画をどのように楽しんでいらっしゃるかお話しいただけますか?

染井:僕は本を読むより映画を見ることのほうが多いですね。仕事柄、ずっと文字を追い続けているのがしんどいので。

城定:本は自分で読み進めなければならないのに対し、映画は勝手に情報が入ってくるので、少し気楽に見られるかもしれませんね。僕も染井さんと同じ理由で、映画を見るのは「仕事」という感覚がどうしてもあります。しかもサブスクだと集中できないので映画館でしか楽しんで見られないんです。僕は映画が好きなんじゃなくて、映画館にいるのが好きなんだと思います(笑)。

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 読書に関しては「仕事」とは思わないから、気分が乗ったときはけっこう読みます。次々と読みたくなって何冊も読む月もあれば、まったく読まない月もあるという感じです。

向井:僕は仕事で読まなきゃいけない本が多いので、読書も「仕事」だと感じることがありますね。プライベートで読みたい本は「積ん読」しているけれど、増える一方です。

城定:それでいうと僕も、「映画化できるかどうか」という視点で読んでいるかもしれない。もはや職業病ですね(笑)。

――小説や映画をどのように楽しんでほしいと思いますか?

城定:小説に関しては、短編でもラノベでもいいから1冊をまず読み通してみる。意外と読めるじゃんと思ったら、また別の1冊を読んでみる。そんなことしているうちにいつの間に読書が好きになっているということもあると思うんですよ。自分の脳内に情景が浮かんでくるという、読書のだいご味をぜひ知ってほしいですね。

向井:僕の子ども時代は、「読んでから見るか、見てから読むか。」という角川映画のキャッチコピーの通り、両方を楽しんでいる人が多かった。僕自身も「なぜこの小説がこんな映画になるんだ!」とか、「映画はめちゃくちゃ面白いのに小説は全然違う話じゃん!」とか、比べるのが好きでした。違いを探すという楽しみ方をしてみてほしいです。

染井:同感です。小説に抵抗がある人は、好きな俳優が出ている映画の原作本を読んでみるのがおすすめ。映画から入った上で「小説も悪くないじゃん」と好きになってもらえたらすごく嬉しいです。映画「悪い夏」に関してもすでに、キャストのファンの方たちが原作を読んでSNSに感想をアップしてくれたり、僕の別の小説や、違う作家さんの作品を読んだと報告してくれたりしています。

 今、エンタメのコンテンツがあふれかえっているし、まとめサイトで読んだ気、見た気になっている人も多いと思う。でも今後どうにかしてそういう風潮に抗いながら小説を書き続けていきたいと思っています。

取材・文=髙倉優子 写真=種子貴之

染井為人(そめい・ためひと)
1983年千葉県生まれ。2017年、「悪い夏」で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、デビュー。その他の作品に『正義の申し子』『震える天秤』『正体』『海神』『鎮魂』『滅茶苦茶』『黒い糸』『芸能界』などがある。

向井康介(むかい・こうすけ)
1977年徳島県生まれ。大阪芸術大学映像学科の卒業制作として作られた、山下敦弘監督の「どんてん生活」に脚本家として参加。2007年「松ヶ根乱射事件」で菊島隆三賞を、23年「ある男」で第46回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞する。その他の主な脚本担当作品に、「リンダリンダリンダ」「もらとりあむタマ子」「聖の青春」「愚行録」「君が世界のはじまり」「マイ・ブロークン・マリコ」などがある。

城定秀夫(じょうじょう・ひでお)
1975年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中から8mm映画を制作。卒業後、フリーの助監督として成人映画、Vシネマなどを中心にキャリアを積む。03年に映画「味見したい人妻たち(押入れ)」で監督デビューを果たし、ピンク大賞新人監督賞を受賞する。その後、Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100タイトルを超える作品を監督。2020年「アルプススタンドのはしの方」がヒットし、第12回TAMA映画賞特別賞、ヨコハマ映画祭と日本映画プロフェッショナル大賞の監督賞を受賞する。その他の作品に、「愛なのに」「女子高生に殺されたい」「ビリーバーズ」「夜、鳥たちが啼く」「恋のいばら」「放課後アングラーライフ」「セフレの品格(プライド)」がある。

本記事は「カドブン」から転載しております

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