大村崑、93歳でも筋トレのおかげで8時間睡眠。現役最高齢の喜劇役者の矜持「家を一歩出ればそこは『大村崑』としての舞台」《インタビュー》
公開日:2025/3/28
部屋から一歩出たら「大村崑」になる
――本にはそうした大村さんの半生のお話だけでなく、奥様の瑤子さんと過ごされているシニアレジデンスでの暮らしについてもいろいろ書かれています。老後のヒントを得る方も多いと思いますが、部屋の外に一歩出たら「大村崑」の顔で過ごされるそうですね。疲れたりしませんか?
大村:いや、疲れないな。舞台とかテレビは共演者がいるけど、生活は「自分」だからね。いつも部屋から出るときは「今から行ってくる」ってびしっとして出るんですけど、瑤子さんも厳しくて「もっと背中伸ばして。おじいさんになってるよ!」とかチェックしてくれるんですよ。「はいっ」って直して、「行ってきます!」ってクルッと回ったら「大村崑」になります。食堂に行けば住人の方と会うんで、「何食べたの?」「今日の肉はうまいよ」「そりゃええね。肉にするわ」とかすれ違いざまに会話してね。向こうの方で誰かが手を振ってたら、「おおーっ」て手を振るしね。そんなんしてると「大村崑さんは面白い」という噂がいっぱい立ってくるんですよ。やっぱり「面白い大村崑」でなかったらあかんでしょ。怖い顔してたら大村崑じゃないでしょ。「疲れるだろうな」と皆さん思うか分かんないけど、僕にしたら楽しいんですよ。大きな舞台みたいなもんですからね。
――住人の方と積極的にコミュニケーションを取る姿勢が素敵ですし、日々を楽しく生きるコツにもなりそうです。コミュニケーションが苦手な人の場合はどうしたらいいと思いますか?

大村:おしゃべりの人と一緒に旅でも行くのが一番いいね。一緒に街歩いてみるとか、散歩してくるぐらいでもね。不思議とそういうことして帰ってくると、その人の友達とも仲良くなったりしますからね。なんかそんなきっかけがあればいいね。たとえばうちのレジデンスには、エレベーターに催しものの情報が貼ってあるんですけど、そういうのに参加するとかね。なかなか参加できない人がいたら周囲の人が誘って引っ張り出したらいい。
――本によれば家ではちょっと怒りっぽいときもあるとか?
大村:もし怒ったらすぐ笑う。怒ったその瞬間に笑いの台詞が出てくるんですよ。それでみんな、ポッと笑う。怒りっぱなしはいけません。そのままドーンと帰ったら、雰囲気が悪くなっちゃう。昔、劇団の中に怒って僕に噛みついてくるやつがおったけど、そういう人は何だかいづらくなってやめていきましたね。
――レジデンスにお住まいの方は60歳以上ですが、それよりも若い世代とはどんな風につきあっていますか?
大村:僕は週に2回近所のジムに通ってますけど、そこにいるトレーナーが20代ばっかりでね。みんな褒めてくれるんですよ。「よくできましたね。崑さん!」とかってね。あとね「崑さんと話してると、元気になる」とも言ってくれます。崑さんが来るとジムの空気もよくなるって。こっちも褒めますよ。前にお世話になったトレーナーが素晴らしくてね、体つきがスーパーマンみたいだから「スーパーマン」って呼んでたんだけど、彼が辞めるときに「スーパーマンと呼んで大事にしてくれてありがとうございます。本当のスーパーマンはあなたです。これからもお元気で」と書かれたメッセージカードをいただいてね。あれは泣いたね。
――本で「威張るな、怒るな」という心掛けを紹介されていましたが、そうしたことも効いてそうですね。
大村:役者の世界では下に厳しい人が多かったんですよ。挨拶に行ってもこっちを見てくれないとかね。でもそういう人は、早く逝っちゃうね(笑)。