終活ではなくピンチを乗り越える“ピン活”を! 泉ピン子が逆境だらけの半生で獲得した思考法
PR 公開日:2025/4/4

「ずっとピンチだった。」
この一言から始まるのが『終活やーめた。 元祖バッシングの女王の「ピンチを福に転じる」思考法』(泉ピン子/講談社)だ。泉ピン子さんと言えば朝ドラ『おしん』、『渡る世間は鬼ばかり』など女優としてのイメージが強いが、18歳のデビューは漫談家としてだった。キャバレー回りをするなかで「もうだめかな」と諦めかけていたころ、ワイドショーの「ウイークエンダー」のレポーターに抜擢され、お茶の間の有名人に。
父は浪曲作家、継母は女流浪曲師、継母の従妹は宝塚歌劇団の振付師という芸能一家に生まれたピン子さんだが、出演していたワイドショーが際どい内容も放送する番組だったため「ワーストタレント1位」に選ばれてしまうなど、実はその道はピンチばかり。それらのピンチをどう潜り抜けたか、終活ならぬ“ピン活”をテーマに綴るのが本書だ。
多く綴られるピンチの中でも印象的だったのが、52歳の時に事務所から独立した際の金銭トラブル。16歳から所属していた事務所に「独立するなら今までの借金を返済するように」と告げられる。それまでお金が必要な時には言えばもらえる“お小遣い制”状態で、実印も預金通帳も事務所に預けていたピン子さん。サインした覚えのない借入書、実印が押された銀行ローンなどが次々判明。裁判の結果、数億円の借金を背負うことに……。
事務所との裁判の判決が出た日は、悔しくて大泣きしたという。しかし、当時『渡る世間は鬼ばかり』は高視聴率連発、CMも10本以上契約しており、ちょうどそのときにもはや伝説となる『ぴったんこカン・カン』の話が来る。仕事面は順風満帆だったこともあり、自分でその借金を返済することを決意。「こんな金で潰れるもんか」と向かい風をパワーに変えて、わずか5年で借金を返済したのだ。
このようにあらゆるピンチを、時には逆境でこそ最大限のパワーを発揮し、時には視点を変えて相手を赦し……ピン子さんは様々な発想で乗り越えてきた。人生の難局に立ち向かう人生の先輩の姿に、こちらも生きる力を分けてもらえたような感覚になった。
また本書にはピン子さんの意外な一面も。長年ファンだった矢沢永吉さんとマンションのエレベーターで偶然遭遇したときのリアクションなどは大女優とは思えないもの! 私も推し活をしている身なので、親近感が湧いてしまった。
長年親友だった西田敏行さんをはじめ、橋田壽賀子さん、森繫久彌さん、黒柳徹子さんなど、昭和と平成の芸能界を支えてきた大御所たちの名前が次々登場する本書。今より活気があった時代のエピソードは、すべてがパワーに溢れている。
本書の中でも「働き方改革なんていらない」と強いバイタリティで時代を生き抜いてきたピン子さんが、これまでご主人と食卓を囲むときは必ず料理を作っており、夫は買い物すらしていなかったという意外な一面も綴られている。そんな夫婦生活もご自身が70歳を超え変化が。例えば週末の夜はご主人がデパ地下に寄ってお刺身を購入してきてくれるようになるなど、無理をせず、一緒に年を重ねる姿も垣間見える。
Web媒体での連載が始まった当初は、終活、老い支度をテーマに提案されたが、「人様を元気にするのが我々芸能人の役目」とピンチを跳ね除ける活動=ピン活をテーマの1冊にしたいと伝えたのだという。老いだけでなく、人生のあらゆる局面に悩む人に手を差し伸べる一冊だ。
文=原智香