草彅剛「これまでの全ての楽曲は血となり肉となっている」。グループ解散から地上波復帰までをポジティブに振り返る【『Okiraku 3』インタビュー】

小説・エッセイ

公開日:2025/4/4

これまでの全ての楽曲は血となり肉となっている

――2016年のエッセイで、2008年のSMAPのアルバム『super.modern.artistic.performance』が気に入っていると書かれていました。時期によって聴かれる楽曲も変化すると思いますが、今でもグループの曲は聴かれますか?

草彅:最近は聴かないですね。全く聴いていないかもしれないです。今は新しいものに目を向けて、何かを生み出していきたいという気持ちがあるのかな。

――ネガティブな気持ちではなく、過去を振り返るよりも自分の歌とギターを高めていきたい、という感覚でしょうか?

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草彅:うん、そうなんだと思います。でも、グループで歌ってきた楽曲は、自分のアイデンティティーというか、血となり肉となっているのは間違いなくて。忘れることは絶対にないし、今さら聴くまでもないって感じかもしれない。リズムとかノリとか、もう散々やってきたので染み付いているんですよね。それにしちゃあ、何で俺は上手く曲を作れないのかなと思うんですけどね(笑)。

人の目なんて気にせず、良いと思うことは何でもやればいい

――エッセイを読んでも、本日お話を伺っていても、草彅さんはとにかくポジティブな方だなという印象があります。

草彅:もう僕はポジティブしかないですから。一つのことを見たときに、捉え方は十人十色じゃないですか。だから、それを自分に都合よく解釈すればいいと思ってるんです。こじつけでも嘘でも何でもいいから、ポジティブな解釈を自分に言い聞かせるんです。

――その言い聞かせを、日頃から実践されていると。

草彅:たとえば、僕、バンダナが大好きでいつも持ち歩いてるんです。お手洗いに行ってバンダナで自分の手をぬぐえたとき「俺ってなんてイケてるだ」って思うんです。見ず知らずの、紙で手を拭いている人に勝ち誇った感じで(笑)。ひどい人なんか、手を拭いた紙をちゃんとゴミ箱に入れずにポイって置いたりするじゃないですか。俺は偉いから、誰かが置いたそれを取ってゴミ箱に入れますよ。そこでも自己肯定感が上がるわけです。

――どうやってそのポジティブさを身につけたのでしょうか?

草彅:それはもう先輩方の後ろ姿を見てきたからです。大杉漣さん、高倉健さん、つかこうへいさんーーたくさんの監督さんや俳優さんと接するなかで築いてきたんだと思います。

 以前、高橋克典さんと、たまたま京都の撮影所でお会いしたことがあって。朝6時ぐらいに控室の前の廊下で克典さんが腕立て伏せしてるんですよ(笑)。「剛くんね、役者は筋肉だよ」とか言っているわけ。マジかよとか思って実際ちょっと筋トレしてみると、確かになんだかホルモンバランスがよくなるのかポジティブになるんです。

――自分に取り入れてみるわけですね。

草彅:物事が上手くなるのはコピーすることだから。何でも人の良いところを真似すればいいんですよ。僕は今でも、着替える前に腕立てとかやっていますからね。急にこういう現場でやりだすから「こいつ何やってんだ」って思ってるスタッフもいるかもしれない。でも人の目なんて気にせず、良いと思うことは何でもやればいいんですよ。そうしているうちに、俺みたいにばかになっていくんだ、本当に。

取材・文=金沢俊吾、撮影=TOWA

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