野性爆弾 くっきー!「昭和後期から平成は“オレンジどろみ”時代」1980~90年代カルチャーを振り返る《インタビュー》
公開日:2025/4/9
無呼吸黒目なし白目状態で書きました
──『愛玩哲学』では、そんなくっきー!さんがたどってきた歴史を感じることができます。そもそもどのようなきっかけで、この本が生まれたのでしょうか。
くっきー!:編集さんが企画してくれはったんですよね。
ポプラ社編集者:昭和・平成のことを知らない若い方々が増えていますよね。そんな中、くっきー!さんのYouTubeで、仕事部屋の棚にカルチャーを感じるアイテムがたくさん並んでいるのを拝見しました。くっきー!さんなら、これまでとは違った角度で昭和・平成の流行を語っていただけるのではないかと思い、ご依頼しました。
──作中では59もの文化・流行について語っています。扱うテーマは、どのようにして決めたのでしょうか。
くっきー!:編集さんからいっぱい出してもろて、「これ行けます」「これはちょっと知らないです」という感じで分けていきました。だから、時々薄いやつもありますね(笑)。そういうのを見つけていただく楽しみもあります。
──やはり核になっているのは、『ビー・バップ・ハイスクール』をはじめとするヤンキー文化、その後にハマったパンクではないかと思いました。一冊にまとまった本を読んで、どんな印象を受けましたか?
くっきー!:『Santa Fe』(1991年に刊行され、世間に衝撃を与えた宮沢りえさんの写真集。朝日出版社刊)くらいデカい本だと思ったら、サイズが意外とタイトで。
しかも、この本を書いていたのは仕事が忙しい時期で、1週間に4つくらい締切があって、脳みそのしわがギュッと閉じてる状態だったんです。だから、ほぼ記憶がない。無呼吸黒目なし白目状態で書きました(笑)。
──締切が近づいてきたら、その都度書いていたんですね。
くっきー!:そう。新大阪までの移動中、新幹線の中でスマホかiPadで書くことが多かったですね。Wordってやつですか? 一応そういうの使えるんで。
パンクでDIY精神を培ったので、革ジャンもバイクも100%いじります

──この本を読んでいると、学生服や革ジャン、バイクなどをカスタムして楽しんでいる姿がうかがえますね。
くっきー!:そうですね。革ジャンは、絶対どこかに穴を開けますね。ピンバッジ入れたり、缶バッジ入れたりね。バイクも今までいろいろ乗ってきましたけど、ノーマル状態はゼロですね。車もそうやけど、100%いじります。
──カスタムして個性を出すというこだわりもかっこいいなと思いました。
くっきー!:パンクってDIY精神があるんですよ。鋲打ったり、穴開けたり、全部自分でカスタムして。その癖がついているのが、デカいかもしれないですね。素の状態で着にくい。もともと手作業というか、ものづくりも好きですしね。
──「これはかっこいい」「これはかっこよくない」というくっきー!さんのスタイルも、この本から感じられました。例えば、アメリカよりもイギリスのものがお好きとか。
くっきー!:アメリカにもかっこいいものはあるので、それは集めますけどね。基本的にはイギリスの雰囲気が好きですね。
──それも、パンクに由来するのでしょうか。
くっきー!:パンクからですね。やっぱりイギリスのパンクで火ぃつかせていただいて、そこから僕が生まれたんでね。血が通いだしたのがその時期なので。
──ライダースを着る時、どんな帽子をかぶるべきかというこだわりについても語られていました。この辺りが、正直ちょっとわからなくて……。
くっきー!:これね、ほんまムズイんですよ。個人的なスタイルの話なんですけど、革ジャン着る時は、基本的に何も被らないのが一番いいんですよ。もし被るとしたら、ハンチングかハット。それがイギリスのパンク式なんですけど。一番ご法度なのは、革ジャンにツバがまっすぐのキャップ。アメリカのいなたいホコリかぶった感じになって、なんというんかな、ぶっとくなるんですよ。アメリカって太いけど、イギリスってシュッとしてますよね。自分はイギリスが好きなので、革ジャンではキャップを被らないという理念、こだわりがあります。他の人からすると「なんやそれ」ってなると思うんですけど。
──そういう一本筋が通ったスタイルに、かっこよさを感じました。「自分はこう」というスタイルを作りたくても、なかなか定まらない人も多いと思います。そんな人にアドバイスを送るなら?
くっきー!:いやいや、今から考えはったらいいと思いますよ。圧倒的に好きになるもん探しゃいい。それが一番だと思います。