「パリに初めて行ってみたけどヤバすぎた…」/酒飲み独身女劇場 ハッピーエンドはまだ来ない㉗

文芸・カルチャー

公開日:2025/4/11

パリで、運命のあいつと

ぴょこぴょこパリを歩き回っていると、運命かのように足がぴたっと止まり動かなくなった。

ここのフレンチ料理を食べるしかないと本能が訴えかけてきている。
どうしてこうも引き寄せられてしまうのだろうか。

そこにあったのは、赤から緑色になったマクドナルドだった。

そして無意識にビッグマックを頼む自分がいた。

結婚指輪と勘違いしそうになる箱ではなく、紙でくるりと梱包されている。

何よりも衝撃だったのは、カロリーが全てに丁寧に記載されているのだ。
やはり緑色になっていたのも健康を意識してなのだろうか。

ビッグマック503キロカロリーは、日本だろうとフランスだろうと相変わらず世界で一番好きな味がしてほっとした。
ほんの少し、パンがつやつやだったり、ソースに入っているピクルスが酸っぱかったりと違いはあるものの、どの世界のビッグマックであろうと一生愛し続けられる自信に変わった。

しかし、吾郎さんのように評価に頼らず新たなる食の扉をとんとんノックしたい気持ちもあったので、サイドメニューのミニキャロットも注文してみる。

日本ではみたことない、小さなにんじん。
フルーツのような立ち位置なのだろうか。

ひょいとつまんで食べてみたら、えっ?と声が出た。

まずいのだ。

マクドナルドでおいしくないなんてあり得るのか。

コースディナーのときに、途中であえて美味しくないものを混ぜて、味にメリハリをつけるというな演出なのか?

馬の気持ちになって食べてみたけど、やっぱりダメだ。
しかし、フレンチ料理として出てきたらそういうものとして受け止められると自分を洗脳することで、ぽりぽりとにんじんを食べ終えた。

直感は、必ずしもおいしいの大当たりを引き当てるわけではないけれど、試行錯誤したり今まで出会ったことのない味を知るという経験は、わたしにとっておいしい思い出。

その楽しさを思い出させてくれたのは、紛れもなく孤独のグルメだった。
吾郎さんありがとう。

こういうのがいいんだよ

イタリアを経由して帰国後は、日本のスープとスパゲッティが恋しくなり、『孤独のグルメ』Season1に登場した昔ながらの喫茶店カヤシマに行ってみた。

夜18時まで注文することができるランチタイムは、時差ぼけで昼夜逆転しているわたしにとって優しすぎる。

吾郎さんも食べていたわくわくセットには、お味噌汁にハンバーグ、大盛りのナポリタンがついてくる。

どれもこれも日本で生まれた料理たち。
食べ疲れしていたせいか、味噌汁がすーっと五臓六腑に染み渡る。

真っ赤に染まったナポリタンは、わたしのよく知るケチャップの味がして安心感に包まれる。

おかずがハンバーグってわんぱくだなぁ。

濃い味付けのわくわくセットは男子高校生が好きそうな味がして、部活帰りお腹を空かせた子供に振る舞うような家庭的な味もして、ほっとする。

こういうのでいいんだよと、思わずぽろりしそうになった。

<第28回に続く>

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さかむら・ゆっけ、●酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。