自分らしく輝くために必要なことを教えてくれる「アミとミアのプリンセス・ドレス」シリーズ! 最新刊は夢を叶えるためのチュチュづくり【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/4/23

アミとミアのプリンセス・ドレス にじの国のきらめくバレリーナ和田奈津子:文、七海喜つゆり:絵/KADOKAWA

 たった一度の、自分だけの人生。誰になんと言われようと、気にせず意志を貫きたい! というのは理想だけど、実際のところ、自分だけのためにひとりで頑張り続けるには限界がある。『アミとミアのプリンセス・ドレス かがみの国のときめきジュエル』(和田奈津子:文、七海喜つゆり:絵/KADOKAWA)の主人公、アミはファッションデザイナーを夢見る、もうすぐ10歳になろうという少女。

 でも、理想のドレスをデザインしても、自分には似合わないと腰が引けてしまう、自信のなさ。そんな彼女の目の前に、かがみの国のプリンセス・ミアが現れて、「あなたの力が必要なの、助けて!」と言われて初めて彼女は「一緒にドレスショップを開けるよう、がんばってみる」と一歩踏み出す勇気を手に入れる。

 欠けたところを補いあって、自分もお客さまも心が沸き立つオーダーメイドの服をデザインする、彼女たちの店がようやくオープンし、初めてのお客さまに精いっぱいこたえようとする姿を描き出すのが、2作目『アミとミアのプリンセス・ドレス にじの国のきらめくバレリーナ』だ。亡くなった母親が、自分と同じ年ごろに踊った〈にじの少女〉の役をつとめるため、まったく同じバレエの衣装をつくってほしい、というのがナナという少女からのオーダー。まずここで、バレエのチュチュにもいろんな種類があるのだと、図解してくれるページが入るのがおもしろい。身にまとうものというのは、ただ好きで、心が躍るものを選ぶのもいいけれど、自分をどう見せたいか、状況にあわせて選ぶことも大事なのだということを教えてくれる。

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 母親と同じ衣装をつくるためには、空の魔女がつくる特別な布を使わなくてはいけない。というわけで、気難しくて雲の城にこもりきりだという魔女に会うため、3人は空の上へと向かうのだけど……。

 アミが、逃げてばかりだった自分を恥じて、堂々と夢を語り、実現するために全力をつくすミアのようになりたいと願ったように、誰かにあこがれるのはとても大事なことだ。あの人ならどうするだろう、と考えて行動することで、今より素敵な自分になれることもある。だけど、まねするだけでは、だめなのだ。母親のように、観る人を笑顔にできるバレリーナになりたいと、志を受け継いだ時に必要なのは、母親のコピーになることではない。自分なりのやり方で、どうすれば魅力的に踊ることができるのかを、必死で考え、模索することが必要なのである。

 自分だけの踊りを見つけたナナのために、アミとミアは、ナナにぴったりの、世界でひとつだけのチュチュをつくる。ナナの魅力が最大限に引き立つように。その試行錯誤もまた、ふたりを育てる。お客さまと一緒に成長するふたりは、すっかり、プロフェッショナルの職人だ。

 流行りの既製服を着るのもいいけれど、自分の体型や雰囲気にフィットした、唯一無二の一着を持つのも素敵だよなあと、本書を読んでいると洋服へのあこがれも生まれる。同時に、自分だけの輝く生き方を見つけたいという強い意志が、読者である子どもたちの心にもきっと、芽生えるはずだ。

文=立花もも

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