新宿ゴールデン街の“怪談バー”へようこそ。ホラー×お酒×人間模様が交錯する異色のホラーコミック【書評】

マンガ

公開日:2025/5/16

 変わりゆく東京のなかで、今も独自の空気を色濃く残す場所——それが新宿・ゴールデン街だ。

 本作『ゴールデン街の悪夢 ~とあるBARに訪れる奇妙な客たち』(鏑木ころも:漫画/竹書房)は、原作者兼作品の主人公であるインディ氏の働くバー「Kangaroo Court Decision」に訪れる人々が語る、奇妙なエピソードをオムニバス形式で描いたホラーコミックスだ。

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 バーで働きつつ、イベントなどで怪談話をする怪談師ユニット「ゴールデン街ホラーズ」として活動するインディ氏。彼の許に集まる奇妙なエピソードは、お店に集うお客たちの話を基にしたものも多数ある。町の歴史的背景も相まって、さまざまな事情を抱える人たちを分け隔てなく受け入れてきた懐の深さも、ゴールデン街ならではの魅力だ。本作は恐ろしいホラーエピソードと同時に、そんなゴールデン街の町の魅力も感じられる作品だ。

 さすがゴールデン街というべきか、集まってくる人々やエピソードも実に個性豊かでトガったものばかり。インディ氏が語るように、店を訪れる人々のなかには、一風変わった雰囲気をまとった“ただ者ではない”人も少なくない。そんな彼らの話は、正直真実か疑わしいものもたくさん。それもまた幽霊やお化けとは少し性質の異なった、生々しい人間の怖さ・恐ろしさがある。

 背筋がゾクッとする話の合間に、おすすめのジンを紹介するコラムも収録。ホラーだけでなく、お酒好きにとってもうれしい仕掛けが満載だ。

 読み終わった後は、実際にゴールデン街で今も働くインディ氏に会いに行きたくなること間違いなし。ホラーとお酒が好きな人、あるいは「怖いもの見たさ」で非日常かつアングラな世界を覗いてみたい人。そんな人にはおすすめしたい作品である。

文=ネゴト/ 曽我美なつめ

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