家事はいかに「やらなくて済むか」を考えるべし/すごいADHD特性の使い方

暮らし

公開日:2025/5/31

素晴らしき才能を持つADHDさんへ

「隠された才能」を200%活かしきる。そんなテーマで描かれるのは、ADHDの特性を抱えながらも、ユニークな視点と行動力で日々を乗り越えていく著者のリアルな記録。ときに笑えて、ときにじんわり共感して、「あ、これ私にもあるかも」とそっと背中を押してくれる一冊です。

SNSで多くの支持を集める著者が、試行錯誤の末に見つけた“生きやすくなるための工夫”たち。失敗を笑いに、苦手をアイディアに変えていく、その姿にきっと励まされるはず。

※本記事は『すごいADHD特性の使い方 人生が本当にラクになるコツ』(やしろ あずき/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

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『すごいADHD特性の使い方 <br>人生が本当にラクになるコツ』<br>
『すごいADHD特性の使い方
人生が本当にラクになるコツ』
(やしろ あずき/KADOKAWA)

 家事、得意ですか? 僕はもちろん苦手です。洗濯も掃除も料理も、すべてが憎い。これを読んでいるキミも、僕ほどではないにしろ、家事に少なからず苦手意識があることと想像しています。
 ADHDにとって家事は永遠の課題です。なぜ、僕たちはこんなにも家事が苦手なのか。それは、その多くが複合的な作業だからだと思います。

 例えば、一言で「洗濯」と言っても、汚れた服を洗濯機に入れる、洗濯機を回す(洗剤、柔軟剤を計って入れる)、干す、取り込む、たたむ、しまう、と、途方もない作業工程があります。「洗う」はできても「干す」作業が苦手ゆえに洗いっぱなしで放置したり、「取り込む」「たたむ」が億劫で永遠に干しっぱなしになったり。そうしたことが続くと必要以上に労力を感じ、苦手意識がついてしまうのです。
 また、料理は基本的に、煮込む間に野菜を切ったり、パスタを茹でながらソースをつくったりと、ADHDが苦手とするマルチタスクの連続です。
 片付けや掃除はどうでしょう。部屋が散らかっていると、まずどこから手をつけるべきかわからない。たまたま手に取った漫画を読み出してしまい、片付けがいっこうに終わらない。汚い部屋を見るのもイヤになる。見ないようにする。汚部屋の完成です。

 そこでここでは、僕なりに考えた、ADHDの家事との向き合い方についてお話しします。まず大前提として、「がんばって家事をできるようになろう!」と思わないでください。もしキミが、さまざまな努力をしたうえで「どうしてもできない」と悩んでいるなら、それはもうできないし、やる必要もありません。今はインターネットであらゆる情報を共有できるため、「最低限の家事はできなきゃ」と自分に圧をかけがちです。でも、別にできなくてもいい。SNSに溢れる「丁寧な暮らし」はすべてファンタジーの世界の話であって、家事ができなくても人は楽しく生きていけます。

 もちろん、「ADHDだからできない」と、何の努力もせずに投げ出すのは厳禁です。
 まずは自分なりに取り組んでみる。それでもうまく回らないようであれば、強い意志で「できない」という自覚を持つ勇気も必要です。さもなければ、「がんばる→またできなかった」の繰り返しが、いたずらにキミの中の自己評価をどんどん下げていくでしょう。
 また、中途半端に「できるはず」というスタンスでいれば、周囲に余計に迷惑をかける場合もあります。「自分なりにがんばったけど、洗濯だけはしんどくてムリ」と言ってくれたほうが、周りの人もいろいろと対応のしようがあるからです。
 まずは、家事をがんばらないこと。
 できなくても工夫次第で生活はうまく回るし、キミという人間性に何の落ち度もないことを忘れないでいてください。
 そうして家事ができないとなった場合は、心がけるべきことがあります。それは、「どうすればできるか」ではなく、「どうすればやらなくてすむか」を考えることです。
 あらゆる家電がいい例です。もともとは人がすべて手作業で行っていたことを、素晴らしき文明の利器によって、現代ではスイッチ1つで賄えるようになりました。
 家事の基本的な考え方は、「どうすればやらなくてすむか」を考え、工夫すること。
 ラクしたり手間を省くことは決して悪いことではなく、めちゃくちゃスタンダードな家事との向き合い方なんですね。
 そこで、僕がやっている家事の手抜き法を以下に挙げました。
 苦手な家事で実践できそうなものがあれば、ぜひやってみてください。

ADHD三種の神器は「乾燥機付き洗濯機」「食洗機」「ロボット型自動掃除機」

 家事が苦手なADHDこそ文明の利器に頼るべき。
 あらゆる調理を自動でやってくれる電気鍋や、アプリと連携して買い物管理までしてくれる冷蔵庫など、最近の家電はマジですごい。
 その中でも特に僕が手放せないのは、「乾燥機付き洗濯機」「食洗機」「ロボット型自動掃除機」。ADHD三種の神器と呼ばれているこれらの家電ですが、もうこれ見た瞬間ポチって購入してほしい。
 特に乾燥機付き洗濯機は、取り入れてから生活が一変しました。僕はアイロンがけや服をたたむ作業は好きなのですが、いかんせん「干す」「取り込む」が嫌いだったので、この作業から解放されたのはありがたかったです。

米は洗わない。野菜の皮も剝かない

 米を洗うのが面倒なら無洗米を使えば解決なんですが、普通の米しか家にない場合も、「洗わなきゃ」と躍起になる必要はありません。そもそも米を洗う目的は、汚れや「ぬか」を取って臭みを取るため。正直、ご飯によほどのこだわりがなければ気にならないレベルなので、ダルいときは「洗う」をスキップしていいのである。
 野菜の皮も同様で、大体のものは剝かなくても食べられるし、そのほうが栄養価が高いという説もあります。「米を洗わなきゃ」「野菜の皮を剝かなきゃ」という先入観を捨てると、調理がグッとラクになり、料理へのハードルが下がります。

切るのはキッチンバサミでいい

 包丁とまな板って、使ったら洗わなきゃいけないのがめちゃくちゃ面倒くさくないですか? 食器と違って、食洗器でも洗えないものもありますよね。この悩みを解決したのが、キッチンバサミという神アイテムです。
 肉や魚はむしろ包丁より切りやすいし、野菜も、葉物はもちろん、きゅうりくらいならバッサリいけます。100均でも買えますが、あえてそれなりのお値段のものを買って調理にフル活用したほうが、コスパ的におススメです。

洋服はハンガー干し→そのままクローゼットにイン

 洗濯物を干す、たたむ、しまうがしんどい人は、洋服をハンガーにかけて干して、乾いたらそのままクローゼットにインすることで、おおよその労力は省けます。ハンガー生活、まじで快適。

「○○するだけ」グッズを使い倒す

 最近はこすらなくても浴槽にスプレーするだけでお風呂が洗えるものがあるし、食器だって浸けておくだけ、トレイに置いておくだけ。そんな、「○○するだけ」の便利グッズがたくさんある。日々の掃除にできるだけ取り入れるべし。
 掃除ってそれ自体はもちろん、こするためのブラシやスポンジの管理がまた厄介なんですよね。これらを使わないで清潔を保てるという意味でも、「○○するだけ」はめちゃくちゃ使い勝手がいいと思います。

食材を買いだめしない、つくる品数を固定する

 買った食材の存在を忘れて腐らせる。そんな失敗を、僕たちは何度繰り返すのか。節約や食品ロス回避のためにも、買いだめはやめるんだ。どんなに安くても、今日、明日で食べる分だけを買え。
 毎日の献立はまず、「何をつくろう」と考えること自体がかなり面倒なので、「ご飯」「おかず」「汁物」の3品とするなど、品数を固定しましょう。基本的には、「焼いて盛り付けるだけ」みたいなシンプルな調理方法が吉。

洗い物を減らす細かい手抜き技

・皿洗い手抜き技その1。ワンパン料理を駆使する。「ワンパン料理」とは、フライパン1枚でつくれる料理のこと。調味料を混ぜるのも焼くのも、全部フライパンの中で完結させます。これに「食材を切らないレシピ」を組み合わせると、マジでいい。包丁やまな板不要になるので洗い物がグンと減る。
 僕が特に好きなのは、「ハンバーグ風月見ひき肉焼き」です。
 ひき肉とみりん、砂糖、チューブにんにく、塩コショウ、しょうゆをフライパンの中で混ぜて焼く。火が通ったら卵を落として、蓋をして待つだけです。本当に簡単なのにめちゃめちゃ美味い。
・皿洗い手抜き技その2。調理した鍋やフライパンから、料理を直食い。マナー違反ではありますが、一人暮らしなら全然アリ。僕の友人には、皿洗いが面倒くさいあまり、炊飯器から直でお米を食べていた強者もいました。
・皿洗い手抜き技その3。食器を使うときはラップを敷き、汚さないようにする。炊飯器直食いのヤツの得意技でした。
・皿洗い手抜き技その4。使い捨ての紙皿やスーパーの食品トレーを食器として活用する。なんかもう、最終手段かも。

 この他にも、生活の中でこまごまと実践できる工夫はたくさんあるでしょう。
 見つけたらぜひ、僕にも教えてください。

まとめ
・家事の基本的な考え方は、「どうすればやらなくてすむか」を考え、工夫すること
・ADHD三種の神器「乾燥機付き洗濯機」「食洗機」「ロボット型自動掃除機」はできれば買って。生活が変わる

<第3回に続く>

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