無限に止まらないオタクトーク!「喋りすぎる」コミュ障が、「喋りすぎ」を武器に変えた話/すごいADHD特性の使い方

暮らし

公開日:2025/6/1

素晴らしき才能を持つADHDさんへ

「隠された才能」を200%活かしきる。そんなテーマで描かれるのは、ADHDの特性を抱えながらも、ユニークな視点と行動力で日々を乗り越えていく著者のリアルな記録。ときに笑えて、ときにじんわり共感して、「あ、これ私にもあるかも」とそっと背中を押してくれる一冊です。

SNSで多くの支持を集める著者が、試行錯誤の末に見つけた“生きやすくなるための工夫”たち。失敗を笑いに、苦手をアイディアに変えていく、その姿にきっと励まされるはず。

※本記事は『すごいADHD特性の使い方 人生が本当にラクになるコツ』(やしろ あずき/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

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『すごいADHD特性の使い方 <br>人生が本当にラクになるコツ』<br>
『すごいADHD特性の使い方
人生が本当にラクになるコツ』
(やしろ あずき/KADOKAWA)

 自分で言うのもなんですが、僕は結構コミュニケーション強者です。
 初対面の人でも気楽に雑談できるし、配信をやれば1人で延々と喋っていられる。
 大勢の前でもあまり緊張しないし、仕事関係の人と、ガチなテンションでビジネスの話もできる。
 でもこれは正直、大人になって、さまざまな努力と学びを経て手に入れた能力です。そう、僕もかつてはコミュ障でした。それも、「話し出したら止まらない」という問題を抱えていました。

 ADHDの人で、僕のように「喋りすぎ」タイプで悩んでいる人は多いはずです。
 会話がキャッチボールだとしたら、投げられたボールを100個にして返すイメージ。しかもその100個が、一方向じゃなくいろいろな方向に飛んでいく。ときには相手のボールを奪ってでも自分のターンにしてしまう。
 マシンガントーク型ADHDって、会話が大体こんな感じだと思います。

 ADHDが喋りすぎる理由の1つは、頭の中に次から次へと新しい話題が浮かんでくるから。
 先ほど「ADHDは常に思考がフル回転している」という話をしましたが、誰かと会話しているときも、脳がまさにこの状態。
 相手に「この前、温泉行ったんだよね」と言われたら、「オレも先週熱海行った!」「そこのプリンがめちゃくちゃ美味くてさー」「プリンっていえば渋谷の夜パフェがバズってるらしい」「夜パフェってどこ発祥?」……みたいな感じで、話題が湯水のように湧き出てしまうんですよね。

 もう1つの理由としては、好きなことへの熱量がハンパないから。
 オタクの早口をイメージしてください。あれです。
 僕は小さい頃からこの傾向が強くて、自分の好きなゲームやアニメの魅力を誰かに伝えたくてたまりませんでした。その熱量がすごすぎるあまりに、小学生や中学生の頃は、「何だこいつ」という変な目で見られ、周囲から浮いていたことは否めません。
 ところが一転、大人になってからは、「喋りすぎ」はめちゃくちゃ強い武器になりました。

 好きなことを言語化する能力は、誰にでもあるわけではありません。
 これは使いようによっては、大きな強みになります。
 例えば僕の場合、自分が興味を持ったものやハマったものを周囲の人にプレゼンしたところ、それが伝染してコミュニティにまで発展した経験が何度かあります。
 起業を目指す経営者に人が集まるのも同じ理屈で、「これが好き」という熱量は、人の心を動かし、巻き込む力があるんです。
 ちなみに、多くの仲間に恵まれた人気漫画の『ワンピース』主人公のルフィは、精神科医目線で見るとADHDだそうです(須田史朗・小林聡幸『キャラクターが来る精神科外来』金原出版)。たしかに性格は楽観的で自由奔放。面白そうだと思えばすぐに行動するルフィは、とっても魅力的で目が離せないキャラクターです。

 思考がフル回転しすぎて話題がころころ変わるのも、アイデアを求められる環境では重宝されます。僕は漫画家なのでメリットしかありませんし、クリエイティブな職場では特に、その発想の豊かさを仕事に活用できるシーンがたくさんあります。
 加えて、少なくとも「喋る」スキルがあることは、人間関係の構築において大きなアドバンテージになると思っています。例えば初対面の人と接するときは、探り探り話すよりも、「自分はこういう人間です」と好き勝手に話したほうが印象に残りやすい。
 自己開示がてら話し続けたほうが、実は相手も警戒心を解いてくれて、距離が縮まるのが早いケースが多いような気がします。「人の話を聞きなさい」と聞き手役に徹することを重視する自己啓発本も多いですが、「喋る」の魅力を封じる必要はないのです。

 協調性を求められる日本では、喋りすぎて空気を読めないような子どもは「変なヤツ」認定されることもしばしば。僕がまさにそうでしたし、それで自信をなくした人もいるかもしれません。
 でも安心してください。不思議なことに、大人になれば、マシンガントークは「面白いヤツ」「仕事ができるヤツ」として評価されることも多いです。
 だから僕はあえて、「喋りすぎ」を改善するのではなく、強みにするという思考にシフトすることをおススメします。
 例えば、営業職やクリエイターなど、そういう力を発揮できる仕事を目指すとか、「好き」を発信するコミュニティに参加したり、なんなら自分でつくってみちゃうとか。見方を変えれば、「喋りすぎ」は立派な才能の1つなんです。
 まあそうは言っても、最低限の会話のマナーは守らなければいけません。「ADHDの特性の使い方12」でお伝えしたように、「演技」として喋るのはおススメです。
 冒頭で軽くお伝えした通り、僕もそれなりの努力を重ねて、コミュ強の今があります。会話はターン制であることを心得るとか、「否定」のマシンガントークをしないとか。その辺りの小技的な話は、後に詳しくお話ししましょう。

まとめ
・「喋る」スキルは、人間関係の構築において大きなアドバンテージになる

<第4回に続く>

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