『遊園地ぐるぐるめ』で“最高に幸せなコラボ”! 青山美智子×田中達也が2人揃って初のトークイベント。救いのある物語の正体は「誰も死なない究極のSF」《イベントレポート》

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/10

 2025年の本屋大賞にノミネートされている『人魚が逃げた』(PHP研究所)など、読んだ人をひとり残さず救ってくれるような連作短編小説を書き続ける青山美智子さん。そして、ある物を別の物に見立てたユーモアあふれる作品を制作し、『おすしが あるひ たびにでた』(白泉社)などの絵本でも話題のミニチュア写真家、田中達也さん。そんな2人の共著であるコラボ短編小説『遊園地ぐるぐるめ』(ポプラ社)が刊行され、3月20日に発売記念イベントが開催された。

 これまでも、青山さんのデビュー作『木曜日にはココアを』(宝島社)をはじめ、『人魚が逃げた』など青山さんの小説の装丁を田中さんが手掛けることはあったが、2人揃ってのトークイベントは初めて。本稿では、トークの中で語られた本作の裏話や、クリエイターとしての意外な共通点などを紹介していく。

打ち合わせを重ねる中で物語を立体化

『遊園地ぐるぐるめ』は「田中さんのアートを見て青山さんが物語を執筆し、その物語を読んで、章の最後に登場するアートをさらに田中さんが作る」という流れで制作された新しいかたちの短編小説。「打ち合わせを重ねる中で物語を立体化していきました。2人で話したことが本の中に入っているから、胸を張って共著と言えます」と青山さん。実際に、とある家族がヒーローショーを観覧するエピソードには、「寂れた遊園地のヒーローショーで、見ている人が少なくて、“自分がいなくなったらどうなるんだろう”といたたまれなくなる感じ」という田中さんの幼少時の実体験が反映されているという。

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『遊園地ぐるぐるめ』の作中に登場するピエロを、青山さんがイメージして描いたイラスト
青山さんのピエロのイラストから、さらにイメージをふくらませてできた、田中さんのイラスト

 お互いの作品から着想を得て創作するという体験は、2人にとっても刺激的だったようだ。たとえば、計量スプーンに塩が盛られたアトラクションのアートを作った田中さんは「これがどういう話になるんだろうと。自分じゃ“塩対応”くらいしか思い浮かばない…」と考えていたところ、「ポップコーンの塩加減の話にうまいこと繋がって」いき、青山さんの想像力にたびたび驚かされたとか。この章の最後には、青山さんの物語から着想を得て、田中さんが制作した、ポップコーンを使ったアートが登場している。

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