『遊園地ぐるぐるめ』で“最高に幸せなコラボ”! 青山美智子×田中達也が2人揃って初のトークイベント。救いのある物語の正体は「誰も死なない究極のSF」《イベントレポート》

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/10

誰も死なない「究極のSF」をこれからも

 来場したファンからの質問では、「小説の中で人を殺さないと決めている理由」について、青山さんが涙ながらに答える場面もあった。「小説のご依頼を受ける時にお答えする言葉があって、ひとつはハッピーエンドであること。もうひとつは、お話の中で登場人物が誰も死なないこと。私たちっていつか死にますよね。来週ランチに行こうねって約束してた友達が急にいなくなっちゃうような……そういう世界に生きてます。でも小説なら、誰も死なないハッピーエンドが叶うんですよ。私はそれをやりたい。生きている人たちを書いて、生きる素晴らしさを伝えたいという気持ちがすごくあります」。

「日常の些細な悩みに寄り添ってくれる、と言っていただけるのはすごくありがたいことだけど、私自身はそこを目指しているというより、究極のSFを書いているつもり。小説家である以上、それを守っていきたい」と、穏やかな中にも強い意志が感じられる青山さんの言葉に、温かな作風の根幹に触れられたというファンの喜びと深い理解が、会場中に広がるようだった。

 ひとときも会話が途切れることなく、ノンストップで続いた1時間半のトークイベント。青山さんの愛情深さと小説にかける熱い想い、田中さんの感性の高さや発想の鋭さ、そして2人のクリエイターとしての矜持が伝わる、充実したイベントとなった。それぞれの作品はもちろん、本作に続くコラボ作品の登場も心待ちにしたいと思う。

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取材・文=吉田あき 撮影=島本絵梨佳

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