本屋大賞5年連続ノミネート作家・青山美智子とミニチュア写真家・田中達也の共著『遊園地ぐるぐるめ』誕生! 「田中さんのアートを見て毎日お話を書いていた、私の夢が叶いました」《インタビュー》
公開日:2025/5/17

2024年11月発売の『人魚が逃げた』(PHP研究所)で5年連続の本屋大賞ノミネートとなった、作家・青山美智子さんと、ある物を別の物に見立ててアート作品を制作するミニチュア写真家の田中達也さん。これまでも青山さんの小説の装丁を田中さんが手掛けることが多く、関係の深いふたりがコラボをした1冊『遊園地ぐるぐるめ』(ポプラ社)が刊行された。
『遊園地ぐるぐるめ』は、田中さんのアートに青山さんの小説がサンドイッチされた、新しいかたちの連作短編小説。章の扉にある田中さんのアートを見て物語を想像し、青山さんによる物語を読み終わった後に、章の最後にあるもう一枚のアートで物語の余韻を楽しむことができる。
青山さんはデビュー前から田中さんのアートのファン。本作の制作も、“田中さんと一緒に本を作る”という青山さんの夢が叶うかたちで実現したとか。著者ふたりで大いに盛り上がった対談の様子をお届けする。
一緒に本を作るのが夢だった

——コラボ短編小説のアイデアはどのような経緯で生まれたのですか?
青山美智子さん(以下、青山):デビュー作の『木曜日はココアを』(宝島社)で初めて田中さんに装丁を手掛けていただいてから、田中さんと一緒に本を作るのが夢だったんです。『木曜日はココアを』は、新人賞をもらったとか、鮮烈なデビュー作だったわけではなく、私はまったくの無名だったのに、田中さんは装丁を引き受けてくださって。その時の感謝もあったし、いつか田中さんと名前が並んでも恥ずかしくない作家になることがいちばんの目標でした。
でも、作家としてどうやってスキルアップしたらいいのか、自分ではわからなかった。田中さんって毎日アートを配信されているじゃないですか。その中で着実に積み上がっていく力をすごく感じていて、私もいい小説を書けるようになるために、筋トレみたいな感じで、1日1本お話を作ろうって決めたんです。誰に見せるわけでもなく、自分の練習のために、毎日配信される田中さんのアートを見ながら1日1本書いて。それを自分でファイルにまとめて、一冊の本みたいにして、あちこちにばら撒いていたんですけど…。
田中達也さん(以下:田中):僕もそのファイルをいただいて読んでいたら、作品の横に物語があるのは面白いなと思ったんですよ。深みが増すというか。それが土台になって、アートに話をつけてもらえるのはいいですねって、会うたびに話していた気がします。
青山:あのファイルがちょっとは役に立ったんですね(笑)。田中さんと本を作りたい話をいろいろな人にしていたんですけど、2021年のある日、『お探し物は図書室まで』などでお世話になったポプラ社の編集者さんにお話ししたら、3日後に企画書を出してくれたんです。しかも、絵本くらいがいいんじゃないかと思っていたら、文芸でやりましょうと言ってくださって。
田中:その頃、僕も同じことを考えていたんですよ。『MINIATURE LIFE at HOME』っていう「家」をテーマにした写真集を作っていた時に、青山さんのお話をつけられるといいなと思って。結局、出版まで時間がなくて叶わなかったんですけど。
青山:『遊園地ぐるぐるめ』の話はトントン進みましたよね。その企画書の2カ月後にはオンラインミーティングをして、パタパタと内容が決まっていった。
田中:1回目の打ち合わせでほとんど決まりましたよね。