本屋大賞5年連続ノミネート作家・青山美智子とミニチュア写真家・田中達也の共著『遊園地ぐるぐるめ』誕生! 「田中さんのアートを見て毎日お話を書いていた、私の夢が叶いました」《インタビュー》

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/17

アートの中に“気づいた人だけ楽しめる”秘密が

——「ぐるぐるめ」と呼ばれる遊園地に来た人たちのお話が短編でつながっていきますね。遊園地というテーマはどのように決まったのでしょう。

青山:あんまり覚えてないんですけど、ひとつの場所で1日の出来事を描くっていう話が最初のほうで出ていた気がする。

田中:そうそう。複数の章に関連を持たせたいのと、それらが合わさって最終的に完成する絵が見えたほうが面白いので。それなら、アトラクションを分割して各章に入れ、最終的に遊園地になるのはどうかな、と。

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青山:モチーフを食べ物にすることも、早めに決まりましたね。田中さんはいろんなモチーフを使って遊園地のミニチュアを作られていますけど、今回は食べ物がぴったりだという話に。

田中:今回は全部、⾷べ物で揃えましたね。以前に“ディッシュニーランド”っていう⾷器だけの遊園地を作ったことがありますけど、たとえば⽂房具と⾷べ物とか、バラバラのモチーフを組み合わせてしまうと作品の統⼀感がなくなるんですよ。

——ディッシュニーランドとは、見事なダジャレです(笑)。たしかに本作のアートには食べ物のモチーフが使われていますね。たとえば、第一章の扉に登場するメリーゴーランドはハンバーガーでできたものです。

田中:どの作品にも遊園地で食べられそうなファストフードを使いました。最初に9つくらいアトラクションの絵コンテと、それが合わさった時の全体図のイメージを出して。その絵コンテをもとに、青山さんがどの章に何を登場させるのか選んでいるんですよね。

青山:そうですね。全体のお話を遊園地の一日っていう括りにしたかったので、Web連載では日中のお話を書き、書籍の書き下ろしには夕方から夜にかけてのお話を入れようと思って。夕方から夜にちょうどいいアートも私のほうで選び、絵コンテをもとにプロットを書きました。私のやり方だと、プロットに芸能人や著名人の顔写真を貼って、当て書きをするんです。

田中:僕はそのプロットをもとに人形を作るんですけど、顔写真があるとイメージが湧きやすくて、すごく作りやすいんですよ。

青山:厳密に言うと、作品ではなく絵コンテを見て書いていますけど、私は田中マニアなので、絵コンテを見ただけで完成図が見えるんですよ。もちろん細かい部分の仕上げは神の域ですけど、絵コンテだけですでに田中アート。

田中:⾃分としても、絵コンテが描き終わったら8割くらい完成だと思っていて、あとはイメージを形にするだけというか。指⽰していろんな⼈に手伝ってもらうこともあるので、僕のアイデアを⼊れた絵コンテ⾃体が作品といっても過⾔ではないと思います。

青山:ただ、仕上がりを見ると、“こうきたか〜!”っていう感動が毎回あって。このハンバーガーで言うと、(第一章の扉にあるアートを指さして)ここに私と田中さんの人形がいるんですよ。カバーの裏表紙でも、私たちの人形が登場人物たちを見守っているんです。ここは、気づいちゃった人の楽しみというか。

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