トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/ 第14回「小噺」

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/19

早いもので芸歴が20年を越えました。
昔は20年とかの人を見たらとんでもないレジェンドと思っていましたがただの髪長男子がなれるので芸人が増えたんだなぁと思ったりします。

その芸歴の中で果てしない数のネタを見てきましたが僕が1番好きなのはネタのオチです。
そのコンビによってオチのやり方はそれぞれなのですが僕の好きなオチは

「ほふぅ〜〜。」

と、いうようななんとも言えない切なさと笑いで終わるオチです。

夕方の「夕焼け小焼け」のチャイムの面白い版というか。
とにかく好きなのです。
なんならオチが見たくてネタを見ているに近いです。

じゃあ誰が「ほふぅ〜〜」なのか。
もう解散していますが和牛さんのオチはかなり「ほふぅ〜〜」な感じになります。


M-1グランプリ2018の2本目の「オレオレ詐欺」
のネタで最後にお母さんと息子が5秒くらい睨み合い
「オカンが心配やからやってんねんで。」
「伝わるか!もうええわ。」


「ほふぅ〜〜」
です。
見てない方申し訳ないのですが本当にほふぅ~~なのでどうにか見てほしいです。
何か良いものを見た!という気持ちと面白い!というのが両方来るのです。
片方があるネタはたくさんありますが両方あるネタはなかなかありません。


落語のオチもとても好きです。

芝浜という噺がありその噺のオチが
「よそう、また夢になるといけねぇ。」

またしても知らない方は申し訳ないのですが軽く伝えると軽く伝わってしまうのでぜひ見ていただきたいです。
これも良いものを見た!というのと面白い!というのが両方来ます。

つまりは「ほふぅ〜〜」です。

長尺なのですがこのオチを聞くためなら何分でも待てます。

5代目円楽師匠は芝浜が十八番なのですが
脳梗塞から復帰して初めての高座で芝浜をやりその出来が良くなかったので幕が閉じてすぐ引退を決意したそうです。

僕風に言わせてもらうと
「ほふぅ〜〜」
という風にお客さんに届けれてないと思い決意されたのかなと思います。
(僕は全然すごいのになんて自分に厳しい方なのだろう。男すぎる。と思いました。)


なので色んなオチが好きなのですが待てるとはいえ、どうしてもオチまでが長くて見れない時があります。

そんな時には小噺を見ます。
小噺は短くオチまでいくもので少ない時間で
「ほふぅ〜〜」という気持ちになれるので好きです。

江戸の小噺で


喜ィさんが昼飯を食べてると、三年前に亡くなった女房が目の前にいました。すると喜ィさんは
「おい!お前!気がきかねぇやつだな!幽霊なんてのは昼に出るもんじゃねぇ!夜に出直してこい!」
「だってお前さん。夜はこわいもの。」


「ほふぅ〜〜」


最高です。
しょうがないねぇ!状態です。
もう1つ


貧乏神が家にずっといるので暮らしが楽にならないから堅苦しい話を聞かせて退屈させたら出てくと考えひたすら話をしました。
すると貧乏神が泣いて帰ろうとしました。
「おい!貧乏神さん!お帰りかい?」と、聞いたら
「はい。あまりに良い話なので仲間も連れてこようと思って。」


「ほふぅ〜〜」


最高です。
しょうがないねぇ!状態です。


このような物が大好きです。
ずっと聞いてたいです。
皆さん。気軽に切なくなりたい、笑いたい時は小噺を聞いて下さい。
心が豊かになりますよ。

では最後にコロナ禍の時に
「布林家ホゲ丸」
という名前で小噺を毎日あげていました。
そのうちの1つをお聞き下さい。



え~、先日同窓会に行ってきまして
僕の友達でドレミファソラシド
という音階をオナラの音で出せるというやつがいましたので
「おいお前、ドの音出してくれよ!」
「んーーー」
出ないんです。
「何してんだよ。ドの音出して!」
「んんーーー」
出ないんですよ。僕なんか腹が立ってしまって
「ふざけんなっ!ちゃんとドの音を出せぇーーー!」
と、怒鳴ったらそいつ

ドじゃなくてミが出てしまいました。



「ほふぅ〜〜」

、、、になれたでしょうか?

<第2回に続く>

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