大人気シリーズ「大ピンチずかん」第3弾!新要素「うっかりメーター」登場、レベル96の大ピンチとは?【書評】
公開日:2025/5/24

子育て中の保護者にとって、子どもが日々直面する“小さなトラブル”は、笑い話で済むこともあれば、思わずヒヤリとさせられる瞬間もある。そんな“子どもならではの大ピンチ”をテーマにした絵本「大ピンチずかん」シリーズ(鈴木のりたけ/小学館)は、ユーモアと気づきを届けてくれる作品として人気を集めている。
この春、シリーズ第3弾として登場したのが『大ピンチずかん3(スリー)』だ。前作までの反響を受けて、今作にも多種多様な“ピンチ”が数多く収録されている。注目すべきは、「うっかりメーター」という新たな要素が導入された点だ。このメーターによって、子どもたちの“うっかりミス”がユニークに可視化されている。

この「うっかりメーター」は、大ピンチが発生した原因を「どの程度うっかりしていたか」という視点から評価する仕組みだ。たとえば、日焼けの跡がゴーグルの形になっていたり、ばんそうこうの形にだけ焼け跡が残ったりするケースがある。夏の“あるあるうっかり”だが、ピンチレベルは意外と低く、本書で最小のレベル4と判定されている。

しかし、本当に困るのは、気づかぬうちに事態が進行し、「しまった!」と後から気づくようなケースである。たとえば、小学校で先生の話を聞き逃してしまい、その内容が「明日の遠足の服装」だった場合などが典型例だ。こうしたシーンも本作には「大ピンチレベル」として登場し、クイズ形式で考えさせる仕掛けもある。
あなたは、次の3つを、大ピンチレベルが高い順に並び替えることができるだろうか。
1「じゅんばんに 5にんずつ ほけんしつで しりょくけんさです。」
2「トイレに いきたいひとは いまの うちに いってきて。」
3「あしたの えんそくは たいそうふくで くること。」
※答えは、本記事の最後で紹介する。この「大ピンチクイズ」は、他に2つ用意されているので、本書で挑戦してほしい!
このように、どの出来事が一番のピンチなのかを読者自身が考える形式になっており、子どもが楽しみながら学べる構成となっている。保護者が「どれが一番ピンチになると思う?」などと問いかけながら一緒に読むことで、家庭内でもしぜんと「聞く姿勢」の大切さが共有されるはずだ。ちなみに、大ピンチレベルは44である。
また、新学期を迎えて一気に友達や顔見知りが増えた子どもにとって、「名前を思い出せない」というのも、レベルが56の大ピンチとして取り上げられている。ここでは、「あ」から順番に頭の中で思い浮かべると思い出せるかもしれない、というヒントを提供してくれている。

本書では、季節に応じたピンチも紹介されている。たとえば、台風の時期にありがちな「傘が裏返る」場面は、大ピンチレベル96という高評価で登場する。これは「濡れる」という実害だけでなく、「周囲の目が気になる」という心理的ダメージも重なることが大きな要因だと推察できる。

このように『大ピンチずかん3』は、子どもが日常生活の中で遭遇する“あるある”を集め、それを「学び」に変えるためのヒントが詰まった一冊となっている。ほとんどの事例が、大人から見ると微笑ましい失敗でも、子どもにとっては大ピンチ。だからこそ、「なぜこうなったのか?」を考える力が子どもに育まれる。失敗は成長のチャンスであり、この絵本は、そのプロセスを親子で共有できる貴重な教材となるのだ。
「うちの子も、こんなことあったかも」「これは前に似た場面があった」と共感できるエピソードが満載の『大ピンチずかん3』。シリーズ3冊を揃えて本棚に置いておけば、子どもの日常を支える“お守り本”として、いつでも頼りになる存在になりそうだ。
「大ピンチクイズ」の答え
3 → 2 → 1
えんそくに ひとりだけ ちがう ふくそうは つらいぞ。
しりょくけんさは いっしょに いく 5にんのうち だれかが たぶん おしえてくれるぞ。
文=なぜかいつも大ピンチのルートつつみ(@root223)