90歳レベルの筋肉量からのマラソンへの挑戦。運動嫌いの60代が“スロージョギング”にハマった理由【書評】
公開日:2025/6/7

あなたは「走ること」にどんな印象を抱くだろうか。なかには、「体育の時間が憂うつだった」「学生時代の持久走がつらかった」といった記憶から、走ることに苦手意識を持つ人もいるだろう。
そんな人には苦しくないペースで走る“スロージョギング”をおすすめしたい。『お金もかからず体調万全!! ゆる走りスロージョギング』(まきりえこ:著、一般社団法人日本スロージョギング協会:監修/オーバーラップ)では著者の体験も交え、スロージョギングの基礎が解説されている。
本作品の主人公はエッセイ漫画家・まきりえこさん。子どもの頃から運動が苦手。そして早発閉経・更年期で運動不足が深刻となり、医師から「筋肉量が90歳」と告げられるショックを受ける。そんな彼女はとあるジョギング講習会でスロージョギングを知ることになるのだった。
スロージョギングは「おしゃべりできるニコニコペース」で走るために、通常より足の着地位置・走る速度などを意識する走法だ。まきりえこさんはスロージョギングを通して、市民マラソンの5.2kmファンラン、7kmの横浜マラソンへ挑むまで体力をつけていく。60代から市民マラソンに挑んだ経験は、運動に苦手意識を持つ人やミドルエイジ世代にとって、希望を感じさせるエピソードだろう。
また、成功体験だけでなく、思うように走れない時期の心境も綴られている。とくに横浜マラソン出走前は体重が増加したり、走っても足が重かったり、苦しい時期があったとのこと。そんな中でも走ることと向き合うひたむきな姿勢に、年齢関係なく鼓舞されるはずだ。
本書は一般社団法人日本スロージョギング協会の監修のもと、「歩ける人なら走れます」というメッセージを一貫して伝えている。実は人類は、狩猟で食べ物を得ていた時代から、長距離を走る能力に特化してきたといわれている。走ることはごく自然な動きであり、本来は誰にでもできるはずだ――そんな科学的な視点も交えながら、「もしかして私にもできるかも」と感じさせてくれる一冊である。