阿達慶「アドバイスは中島健人君、演技練習は井ノ原快彦さん」ベテラン俳優陣の中で難役を演じる苦労【インタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2025/5/30

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年6月号からの転載です。

阿達慶 初出演の“異質感”を武器に未来人を演じる

「保彦の過ごしたあの夏が、本当に僕自身の記憶、僕自身の体験であるかのように感じます」

 阿達さんにとって、映画初出演作『リライト』の撮影現場はそれくらい特別で濃密だった。阿達さんが演じた転校生・園田保彦は、300年後から来た未来人。同級生の石田美雪と恋に落ち、一夏の思い出を胸に未来へと帰る……はずだったが、なぜか彼はタイムリープを繰り返し、次々と同級生たちの前に現れる。阿達さんは、「絶対に誰にも負けない」と強い思いでオーディションに臨み保彦役を獲得した。しかしいざ撮影が近づくと、ベテラン俳優陣の中で未来人という難役を演じるプレッシャーに苛まれた。それを救ってくれたのは、松居大悟監督だった。

「監督が教えてくださったのは、相手に委ねることです。共演者の皆さんの巧みな演技を自然に受けていれば良い。初めての映画の現場にポンと入った僕の異質感は、未来人に通じる。初出演を逆に武器にできたかなと思います」
松居監督のアドバイスは常に温かく、阿達さんはすぐに演じることが楽しくなった。本作は大林宣彦監督の『時をかける少女』へのオマージュを込めて、オール尾道ロケを敢行した。その風景にも阿達さんは助けられた。

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「坂道、神社、ロープウェイ……どこもまさに青春という雰囲気の美しさでした。尾道は不思議な力がありますね。僕はあの街で、東京では味わえない開放感を感じました。保彦がいた未来はどんな世界かわからないけれど、過去に来た彼もやはり、僕と同じような開放感に浸っていたんじゃないでしょうか。その点でも、保彦に自分を重ねることができました」
事務所の先輩にも力を貸してもらったそう。

「中島健人君に、ライブをしている仙台まで行ってアドバイスをいただきました。一番支えてもらったのは、井ノ原快彦さんです。わざわざセリフの練習にも付き合ってくださって」
本作をぜひ何回も観ていただきたい、と阿達さんは最後に力強く語った。

「保彦のタイムリープ一つ一つに物語があります。タイムリープの謎はパズルみたいで、パシッとすべてのピースがはまったとき、すごく気持ちがいい。その謎解きを知った上でもう一度観ると、また違った面白さを発見できると思います」

取材・文=松井美緒、写真=TOWA

あだち・けい●2005年、神奈川県生まれ。19年に入所しジュニアとして活動を始める。コンサートへ出演のほか、近年の主な出演作として、舞台『Endless SHOCK』『祭 GALA』『トンデモ?ピーター・パン!』、ドラマ『つまらない住宅地のすべての家』などに出演。『リライト』で映画初出演を果たす。

ヘアメイク:浅津陽介 スタイリング:柴田拡美(Creative GUILD) 衣装協力:Skeleton Lamp、soerte(株式会社アンティローザ)

映画『リライト』
(画像コピーライト表記→ © 2025『リライト』製作委員会)
原作:法条 遥『リライト』(ハヤカワ文庫) 
監督:松居大悟 
脚本:上田 誠
出演:池田エライザ、阿達 慶、久保田紗友、倉 悠貴、山谷花純、大関れいか、森田 想、福永朱梨、若林元太、池田永吉、晃平、八条院蔵人、篠原 篤、前田旺志郎、長田庄平(チョコレートプラネット)、マキタスポーツ、町田マリー、津田寛治、尾美としのり、石田ひかり、橋本 愛 
配給:バンダイナムコフィルムワークス 
6月13日(金)全国公開

高校3年の夏、美雪のクラスに転校生の保彦が来た。彼はある小説を読み、300年後からタイムリープしてきた未来人だった。秘密を共有した美雪と保彦は恋に落ちる。そして7月21日、運命が大きく動く。保彦からもらった薬で10年後にタイムリープした美雪は、未来の自分から「あなたが書く小説」と1冊の本を見せられた。それは、保彦が未来で出会う小説だったのだ。タイムリープから戻った美雪は、未来へ帰っていく保彦に、この夏の二人の物語を書いて必ず時間のループを完成させる、と約束する。10年後、小説家になった美雪は、ようやく出版に漕ぎ着けた保彦との“自分だけの物語”を手に帰省する。しかし運命の日、10年前の美雪は来なかった。なぜ来ない⁉ 現在、過去、未来、時を翔け巡り「リライト」される運命の行方は?

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