小栗旬主演『フロントライン』コロナ集団感染のダイヤモンド・プリンセス号を描く。体験者取材で気付いた、報道されない真実【増本淳 インタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2025/6/6

雑誌『ダ・ヴィンチ』の人気コーナー「カルチャーダ・ヴィンチ」がWEBに登場!
シネマコーナーでは、目利きのシネマライターがセレクトする“いま観るべき”映画をピックアップ。その舞台裏を、作品に携わる方々へのインタビューで深掘りします。

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年6月号からの転載です。

フロントライン=最前線で未知のウイルスに立ち向かった者たちの知られざる人間ドラマ

『フロントライン』企画・脚本・プロデュース 増本 淳

「役のモデルとなった方々に取材するうちに、報道などから得た情報は表面上のことだけだったと気づかされました。同時に関係者たちは、こんな想いを抱いていたのかと。船内での出来事を伝えなきゃというよりは、『多くの人が知ってくれたら、少しだけ世のなかがよくなるかもしれない』と思ったのが企画の始まりです。脚本については、脚本家としてのキャリアが長い方々に依頼する選択肢もありました。ただ膨大なリサーチを要する作品の場合、やっぱり実際に会って話を聴いている人間の情報量が最も多い。加えて取材時の温度感や気になるポイント、“取材相手のこの想いを伝えたい”と感じた瞬間の気持ちは、僕しか知らないですよね。テクニック面では劣るかもしれないけど、取材相手の想いはいっぱい込められるのではないかなど、トータルで考えた結果です。ただ、あのとき関係者は相当な葛藤や不安、逡巡を抱きながら活動していたはずなので、人間ドラマは分厚い一方、派手な画に欠けてしまう。でもエンターテインメントとしては映像のダイナミズムやアクション性も提供したい。両者をどういうバランスで選択するかは悩みました」

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「僕は観客の代表、第一号でいたい」と語る、増本さんから観た映画『フロントライン』は?

「これは監督と共通の感想ですが、僕らは編集段階から100回以上観ているのに、観るたび感動や新しい発見がある。筋書や結末を観るタイプの作品なら2、3回で飽きますけど。もちろん船内で何が起こっていたかを解き明かす物語ですが、一方で関係者がどんな想いで活動していたかを描く映画で、それを役者たちが台本の存在を感じさせずに表現してくれている。だから展開がわかっていても、登場人物たちの表情や心の揺れが胸を打ち、没入できる。ストーリーもですけど、一番は彼らのお芝居を観にきてくれたらと思います」

ますもと・じゅん●1976年生まれ。2000年にフジテレビに入社し、『救命病棟24時』『Dr.コトー診療所2006』『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』シリーズなど数々のドラマをプロデュース。2019年よりフリーランスのプロデューサー、脚本家として活動。福島第一原発事故を描いたNetflixシリーズ『THE DAYS』の企画・脚本・プロデュースを手がける。

『フロントライン』
監督:関根光才 
出演:小栗 旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介 
2025年日本 129分 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
6月13日全国公開

日本で最初の新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船、ダイヤモンド・プリンセス。出動要請を受けたのは、未知のウイルスは専門外の災害医療を専門とする派遣医療チーム、「DMAT(ディーマット)」だった。事実を基にオリジナル脚本で映画化。

取材・文=柴田メグミ、写真=鈴木慶子
 
(c)2025「フロントライン」製作委員会 

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