円安・物価高騰時代を親子で生き抜く! 「なんでお金を払うの?」「お金の価値って変わるの?」対価の仕組みから投資まで、まんがで学べるお金の本【書評】

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PR 公開日:2025/6/2

まんがと図解でよくわかる-きみたちはどう稼ぐか
まんがと図解でよくわかる-きみたちはどう稼ぐか坂本綾子/中央公論新社

 いろいろとほしいものが増えてくる年代の子どもに、お金についてどう伝えたらいいかわからない、と悩んでいる親は多いはずだ。気安く「買えばいいじゃん」などと言う我が子にお金の大切さを知ってもらいたい、そんな人もいれば、将来に備えて、子どもに投資の考え方を教えたい人もいるだろう。それぞれの家庭に役立つのが、本書『まんがと図解でよくわかる-きみたちはどう稼ぐか』(坂本綾子/中央公論新社)だ。

 著者は、ベストセラーとなった『お金の超基本』(朝日新聞出版)などで、人生に必要なお金の情報をわかりやすく伝えてきたファイナンシャルプランナーの坂本綾子氏。本書では、学校の授業でも教え始めているお金の知識を、前川わかば氏によるまんがと、まつむらあきひろ氏のイラストとともに、やさしい言葉で伝えている。主に、小学校中学年以上に読みやすい内容だ。

 まんがの主人公は、小学校4年生の成(なる)。IT系デザイン企業を経営する父と、企業で経理の仕事をする母、そして小1の妹・宙(そら)と暮らしている。成はある朝、忙しい父と母のためにコーヒーを淹れる。すると父が成に、コーヒー屋さんを起業してみないかと提案。成はその日から、父や母、ファイナンシャルプランナーの叔母・正美からアドバイスを受けながら、お小遣いでコーヒー豆を仕入れたり、1杯の値段を決めたり、お客さんを広げるためにイベントに出店してみたりと、コーヒー屋のビジネスに奮闘する。そんな日々を通して、成のお金に対する見方が変わっていく。

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 いろいろな困り事に直面する成の関心に対応して、「お金とは?」「お金を手に入れる方法」「使い方」といったテーマの解説が挟まれる構成だ。まんがと解説をあわせて読んでいくことで、経済の仕組みを一から学べる。子どもがお金に対して最初に抱く、「なぜものを買うのにお金が必要なのか」という疑問に答える「対価」の考え方や、それぞれが得意なことで働き、助け合うことで成り立つ社会の仕組みについてもかみ砕いて伝えていて、子どもが理解しやすい。

 為替による物価の変動や、投資の仕組みなど、今の時代により求められる知識も網羅していて、それらを子どもに丁寧に伝えられていない親にとって、ありがたい。読書やまんが好きな子どもならひとりで楽しく読めそうだし、子どもが読めないとしても、本書は大人が子どもに伝える上でのヒントになる。「なんでこれ買ってもらえないの?」という子どもに対して、つい「うち、お金ないから」で片づけてしまいがちだが、そんな言葉よりもずっと子どもに響くお金の答えが、本書には詰まっている。

 一方で本書には、「有限なお金の使い方」「買うか、買わないか、決め手は?」「お金を使う優先順位」など、大人も考えさせられる内容も多い。漫然と節約をしたり、子どものお年玉をただ貯金したりしていた人が、立ち止まり、家族や子どもにとって本当に大切なものや、有意義なお金の使い道を考えるきっかけになるだろう。

 お小遣いをただ受け取り、使っていた成が、お金を動かすことでその価値や仕組みを知り、成長していく。そんな彼の姿から、お金の知識が、子どもの決断力や、人生の道を切り開く力にもつながることを感じる。人の生き方や価値観を決めるピースにもなる「お金」について、大人も子どもも楽しく学べる1冊だ。

文=川辺美希

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