親孝行は“ハマる”もの。家族に全てを捧げた父の夢を叶える! SNS総フォロワー数190万人超 のYouTuber「親子バラエティ」が初エッセイ刊行

文芸・カルチャー

公開日:2025/6/6

お父さんの夢を叶えたら家族が会いで溢れました
お父さんの夢を叶えたら家族が会いで溢れました親子バラエティ/KADOKAWA

 親と離れて暮らす人は、親が生きているうちにあと何回帰省できるか?と計算して、あまりの少なさにゾッとした経験がある人は多いのではないだろうか。結婚式などでお礼を言う機会はあるが、日常的に伝えるのは難しいと感じるのは私だけではないはずだ。時間は限られていて、休日に夕方まで寝間着で過ごしてカップ焼きそばを食べながら「年に1回帰るとして、親にはあと15回しか会えないのか」などと計算してショックを受けている場合ではない。

 本書『お父さんの夢を叶えたら家族が会いで溢れました』(KADOKAWA)は、登録者数100万人を誇る、親孝行をテーマとしたYoutubeチャンネル「親子バラエティ」を運営する息子氏とお父さんの初エッセイ。息子氏はチャンネルを始めたきっかけや動画の舞台裏などを語り、お父さんは撮影時の心境などを茶目っ気のある言葉で語っている。

 本書によると、息子氏が初めて親孝行をしたのは高校2年生の時。ゲーム配信で得た収益で家族にお寿司を奢ったそうだ。子どもにお金を払わせる心苦しさから注文できない両親や祖母と、その空気を打開するためにどんどん注文する息子氏。最終的には全員大喜びで、初めての親孝行は大成功だった様子が語られている。注目したいのは、この節には「親孝行にハマった日」とタイトルが付けられていることだ。義務感ではなく、達成感に“ハマった”から続けている、というサイクルは新たな価値観ではないだろうか。我々は親孝行中毒になって、親孝行沼に浸かればいいのだ。

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 車やバイクをプレゼントする大掛かりなエピソードが目立ってしまうが、手紙を読む、両親からの連絡にちゃんと返信をする、などささやかな親孝行の大切さも綴られている。かつて子ども達に食べ物を譲り、趣味を失い、働き続けたお父さんの人生の舵を、息子氏から再びお父さんの元へ戻す作業こそが親孝行であることが読み取れる。

 様々なサプライズやプレゼントを通じて、もう何も差し出す必要はないよ、お父さんは自分の人生を楽しんで!と伝え続ける息子氏と、照れながらも受け入れていくお父さんとの関係の変化は、先の見えない育児をする私にとって、ここに向かって歩けばいいんだ、と思えるような灯にもなった。

 親孝行のタイミングについて息子氏は「思い立ったらすぐ実行するべき」と語っている。親が健在で、親孝行できる関係にあるならば、親孝行にハマれるチャンスだ。本書を手引きに親孝行の沼に浸かってみてはどうだろうか。無駄な休日で時間を無駄遣いした私も、読了後すぐ電話をとった。「米が高いね、こちらは蒸し暑くなってきたよ」と話すだけで嬉しそうな父にも、本書をオススメしたいと思った。

文=米田ゆきほ

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