変化を重視する藤井隆の「若い頃にやっておいてよかったこと」/マ・エノメーリ
公開日:2025/6/21
藤井隆の「素」があふれた初エッセイ集!
唯一無二のコメディアンが「仕事」「人付き合い」「生い立ち」「好き」にまつわる話を本音で語り尽くす、渾身の80000字超、オール本人書き下ろし。
「やりたいことをやっていくためのヒントとは?」「快適なコミュニケーションを生む、言葉選びの秘密は?」「周りの人に楽しんでもらうために意識していることとは?」「親や妻、身近な人とのかかわり方は?」「若い頃にしておいてよかったことは?」「苦しかった経験とは?」「セルフケアはどうしている?」 など……ユーモアと優しさあふれる筆致で綴られたエッセイには、日々を快適に過ごすヒントも多数散りばめられています。
全世代に読んでほしい、優しく背中を押してくれる珠玉の一冊です。
※本記事は『マ・エノメーリ』(藤井隆/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

若い頃に「やっておいてよかったこと」はありますか。
人それぞれですし、どちらも取り返しのつかないことになり得ることなので、自分の場合はという前置きが必要ですが、転職と旅行です。仕事や趣味などひとつのことを続ける素晴らしさを尊敬していますが、自分の性格や性根では、それは難しいことを子供ながらに知っていました。たとえ好きなことでも長くは続かないこともありました。
大体のことは変化させたくなる性格だと自負してます。
その欲求を道に水をまくような感じで、たまに満たしてくれるのが旅行で、ダイナミックに変わったのが転職だったと思っています。20代は特にその傾向が強く、経験したことの無いものは勿論、想像もしてなかった出会いや体験が嬉しくて、それが優先順位の高いところにありました。迷った時は「どうせなら初めてのほう」「せっかくならやってないほう」「食べたことないほう」と知らないを基準に選んでました。
その選択を後悔した場面はこれまでいくつもありましたが、良かったと心底思えた出来事が転職と旅行には数々あったので、ボクは恵まれていると思っています。
人生や生活の中心に仕事があります。そう思えるのは20代で転職したことが大きいです。そして、旅行での体験が仕事で迷った時、判断するボクの背中を押してくれました。旅行での体験が違うアイデアや視点をくれて仕事の内容を考える機会をもらえたりもしました。ゆっくりと旅を楽しんで生き返るというよりは、なにかこう、急かされるといいますか、浮き足立って覚醒させられる旅が多かったように思います。
楽しかったり、心底嫌だな、と感じたりすることもありましたが、20代、30代の頃に転職(仕事)と旅行で感じることが出来たそれぞれの経験は良かったと思います。
楽しい思い出は旅行の帰り道からすぐに活かされて飛行機の中で思いついたことを寝ずにノートに書き留めたりしました。嫌だった思い出の幾つかはさっさと忘れましたが、40代の後半辺りからふとそれらの経験がプラスに転換できたこともありました。恵まれているのは20代、30代だった時の自分自身が置かれていた状況と中身の充実度、それがバブル崩壊後の90年代、2000年代と相性が良かった部分がいくつかあったんだと思います。時代が変わったこれから、その思考性のまま走り抜けるのか、今一度、考え直さないといけないのか。
転職とこれまでの旅行を楽しい思い出にしていたいので、今からが正念場です。
<第2回に続く>