藤井隆「関係者以外立ち入り禁止」の“関係者”になりたい。働くことへの想いと憧れ/マ・エノメーリ
公開日:2025/6/23
藤井隆の「素」があふれた初エッセイ集!
唯一無二のコメディアンが「仕事」「人付き合い」「生い立ち」「好き」にまつわる話を本音で語り尽くす、渾身の80000字超、オール本人書き下ろし。
「やりたいことをやっていくためのヒントとは?」「快適なコミュニケーションを生む、言葉選びの秘密は?」「周りの人に楽しんでもらうために意識していることとは?」「親や妻、身近な人とのかかわり方は?」「若い頃にしておいてよかったことは?」「苦しかった経験とは?」「セルフケアはどうしている?」 など……ユーモアと優しさあふれる筆致で綴られたエッセイには、日々を快適に過ごすヒントも多数散りばめられています。
全世代に読んでほしい、優しく背中を押してくれる珠玉の一冊です。
※本記事は『マ・エノメーリ』(藤井隆/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

アルバイトをする中で、印象に残っている出来事や学びになったこと、事件などがあれば教えてください。
高校生になって嬉しくて叫びたかったのが「これで正々堂々とアルバイトが出来る」ということでした。中学生の頃からアルバイト情報雑誌を読んだりしてアルバイト出来ることを楽しみにしてました。なんとなく憶えているのが時給700円っていうのが多かったような時代の話です。
今となったらなぜ、そんなに働きたかったのかよくわからないのですが、両親含めて周りの人が働き者が多くて楽しそうとは言いませんが、労働する意味や理由を働く姿で教えてくれたのかもしれません。
初めてやったアルバイトは営業終了後ゴルフの打ちっぱなしの球拾いでした。仲良しの同級生のお兄さんが行ってたアルバイトで、仲良しに紹介してもらって一緒に始めました。他のアルバイトもやりながら結局2年生の時も続けてやっていました。
駅のうどん屋さん、ジーパン屋さん、スーパーマーケットの鮮魚部門、デパートのケーキ屋さんでアルバイト出来た時はバックヤードを通る時に精肉店の大きな冷蔵庫の中で眠っている一頭買いの牛に驚きながら大興奮してました。
子供の頃から「関係者以外立ち入り禁止」にものすごく憧れがありました。「関係者になりたい」ってずっと思ってました。
高校生の頃通ってた名画座の廊下の先に「関係者以外立ち入り禁止」の札が貼ってあるドアにどうしても入ってみたくて、軽く押してみたこともありました。なので、今、舞台挨拶で映画館に伺う時、控え室から舞台へ向かう時、バックヤードを歩いてる時にしみじみ関係者なんだなぁーと噛み締めています。
場所によっては映写機の後ろを通る時もあって、「ザ・関係者」って感じがして誇らしいです。事件は起こってないですが、その時、社員の皆さんや先輩方に教わったことを、今もふと思い出すことがあります。
今の仕事の働き方と内容はアルバイトで経験させてもらえた内容とぜんぜん違うのでそのままスライドできる教えではありませんが、少しでも無駄が出ないよう目指し、生産性を上げること、買ってくださるお客さまへの思い、一緒に働く仲間・チームワークの大切さ、などは内容が変わらず、アレンジしたらそのまま使える教えだったと思います。今も良いお店に出会うと「バイトしたいな〜」と思っています。
<続きは本書でお楽しみください>