成長とともに見え始める他の子たちとの違い…発達障害かもしれない息子との向き合い方に悩み、葛藤する母親をリアルに描く子育てコミックエッセイ【書評】
公開日:2025/6/25

「私のしつけが悪いのだろうか」そう悩み、自分を責める親は少なくない。
『発達障害、認められない親 わが子の正解がわからない』(ネコ山/KADOKAWA)は、発達障害を抱える子どもとの関係に葛藤する母親の姿を描いた、胸に迫るコミックエッセイだ。
主人公は「少し手のかかる子」と思ってきた息子に、「もしかして発達障害かもしれない」と不安を抱くようになる。けれどその思いを誰かに打ち明けようとしても、夫はまともに話を聞いてくれず、母親としての責任感だけが重くのしかかる。わが子を愛しているのに、うまくいかない毎日。つい声を荒らげてしまい、後から自己嫌悪と後悔する日々。周囲の何気ない言葉や視線にも敏感になり、「育て方が悪いのでは」と自らを追い詰めていく彼女の姿に、読む側の心は締めつけられる。
近年、女性の社会進出や父親の育児参加が広がりつつあるとはいえ、「育児は母親の役目」という根強い意識はいまだに残っていると思う。そんな中で、「ちゃんとしなきゃ」と自分を追い込み、誰にも頼れず、孤独の中で子育てと向き合う母親のリアルがこの作品には詰まっている。
主人公はもともと社交的で、人との関わりが得意なタイプ。だからこそ、思い通りにしてくれないわが子の気持ちが分からず、どう接すればいいのか戸惑うのかもしれない。「なぜ伝わらないのか」「自分はちゃんと向き合えているのか」と悩みながらも、わが子を理解したいと願い奮闘する姿は、多くの親たちの胸に深く刺さるだろう。子育てに正解はない。誰もが悩み、迷いながら親になっていく。本作は、そんな揺らぎの中で懸命に自分と子どもに向き合うすべての人に、そっと寄り添ってくれる作品だ。
育児に不安を抱えている人、親と子の距離に悩む人に手に取ってほしい。静かであたたかなメッセージが、きっと心に響くはずだ。