夫は確かに不倫をしているはずなのに…カメラも盗聴器も設置したのに証拠が掴めないのはなぜ? 伏線だらけの不倫ミステリーコミック!【書評】
公開日:2025/6/29

離婚の一因となる不倫。近年はマンガでもさまざまな角度で不倫をテーマにする作品が増えているが、なかには単なる不倫モノのはずが、想定外の展開で興味を引きつける物語が存在する。
『夫の不倫を証明できない』(ぱん田ぱん太/KADOKAWA)もそんなユニークな不倫マンガの一つだろう。主人公・牧村香澄はとあるIT系企業に勤めるウェブデザイナー。同じ会社の執行役員を務める夫・高政と円満な夫婦関係を築いていたが、ある日突然SNS上で夫の不倫を匂わせる写真がDMで送られてくる。
自分の顔を隠し、下着姿で夫の私物を身に着けながら、香澄の自室と思われる場所で自撮りをする女性。同じ会社の新人社員・島崎海音と思しきその女性と夫の不倫の決定的な証拠をおさえるべく監視カメラや盗聴器も設置する香澄だが、なかなか思うようにその証拠を掴むことができないでいた。
本来なら不倫をしているはずの時間、場所になぜかいないふたり。はたしてこの不倫は事実か、嘘か? 夫と海音は本当に不倫しているのか? ありふれた不倫の泥沼劇と思いきや、ちょっとしたミステリー要素も織り込まれた作品となっているのが本作の特徴だ。
物語が進むにつれてこの謎が明かされていくのも読み応えを生み出しているポイントだろう。
人間の行動原理や価値観には、その人が幼少期からどのように育ってきたかという環境的背景が如実に反映される一面がある。不倫という状況のみならず、その結果に至る過程についても登場人物のバックボーンを描くことで、よりこの泥沼劇を、複雑かつ生々しいストーリーにしているのだ。
はたして香澄は不倫の証拠を掴めるのか。すべてが明らかになった時、登場人物はみなそれぞれにどのような結末を歩むのか。ぜひ見届けてほしい。