「ほうかご」に逃げ場はあるのか?襖の向こうに広がる異次元の学校で巻き起こる怪奇現象【書評】

マンガ

公開日:2025/7/24

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

 小学生の頃、「学校の七不思議」と呼ばれる怪談話を耳にしたことのある人は多いだろう。昼間はにぎやかな学校が夜になると不気味な場所に変わるという発想は、いつの時代も変わらない。子どもたちの口伝えで広まった噂話や都市伝説。その怖さを共有することで、友達との結びつきを深めたりしてきた。

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 そんな子ども時代の恐怖感情を懐かしく思い出させてくれる作品が、『ほうかごがかり』(甲田学人:原作、メイジ:漫画、potg:キャラクター原案/KADOKAWA)だ。

 主人公は小学6年生の男の子・二森啓。ある日の放課後、啓は教室の黒板に自分の名前とともに「ほうかごがかり」という謎の係名が書かれているのを見つける。そしてその夜遅く、自室に突如として学校のチャイムが鳴り響く。さらには隣の部屋から「ほうかごがかりは学校に集合してください」という不気味な声が聞こえてくる。驚いた啓が襖を開けると、そこには闇に包まれた異次元の学校「ほうかご」が広がっていた。

 本作の見どころは、作中に多数登場する「怪異」の描写の恐ろしさにある。名もなき怪異たちを観察し、記録するという任務を命じられた6人の少年少女。あちこちでおぞましい怪異たちがうごめく「ほうかご」に漂う不気味さが子どもたちの心をじわじわと侵していく様子には臨場感が溢れており、読み進めるほどに背筋が冷たくなるような感覚に襲われる。完全に閉ざされ、一切の逃げ場を絶たれた空間に満ちた息詰まるような緊張感。子どもたちの不安げな息遣いが今にも聞こえてきそうだ。

 また、尋常ではない恐怖の中でしだいにあらわになっていく子どもたちの心の闇や感情の揺れも、本作の見どころのひとつ。逃げ場のない「ほうかご」で、彼らが目にするものの正体とは一体? 徐々に恐怖が増していく展開から目が離せない。ホラー好きな人はもちろん、怪談好きはもちろん、放課後の不思議な思い出を振り返りたい人にもおすすめしたい一冊だ

文=ネゴト / 糸野旬

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