トム・ブラウン布川ひろきのエッセイ連載「おもしろおかしくとんかつ駅伝」/ 第16回「長嶋茂雄終身名誉監督」
公開日:2025/6/30

朝、東京から大阪に仕事で向かっている時に携帯を触っているとポップアップの文字が途中まで見えました。
8:43 「長嶋茂雄終身名誉監督が」
だけ見てすごく嫌な予感がしました。
それは的中して亡くなったという訃報でした。
前にもここで書きましたが完全にジャイアンツファンですので心乱されました。
しかし、この後M-1の優勝予想で僕ら1択と言ってきたのに前日にバッテリィズに変更してきたスーパーマラドーナ武智さんを吊し上げる企画だったので悲しい気持ちはどこかにしまわないと気合いを入れれないと思い一回忘れようとしました。しかし、なかなか頭の中から離れません。
「そりゃあ41年間好きだった方を頭から消すのは難しいよな。」
と、思い作戦を変更して長嶋監督のことをたくさん思い出してありがとうの気持ちで迎える。心乱さず収録に挑める。
すぐにそっちに変更しました。
もちろん野球のプレイとか10.8決戦で長嶋監督が試合前に選手全員に言った「勝つ!勝つ!勝つ!」
等はあるのですがそういうみんなが知ってること以外で長嶋監督であった自分の想い出を考えよう。
昔、僕はゲームセンターでバイトをしていたのですが、お店の締め作業は深夜25時頃に1人でやってました。営業中は色んなゲームの音が響き渡っているのですが、閉店後はゲームの電源を切るので何の音もなくなります。今まですごい音が響いていたこととの落差で店内はさらに静かに感じます。
閉店作業が全て終わると電気を消すので店内は真っ暗。何も音がしない真っ暗な中、さらに景品の人形やフィギュアがあるので異様な空間です。最後にセコムをONにして出口まで行き、帰ります。セコムはONにした瞬間
「ピーー。ピーー。」
という殺風景な音が鳴り、真っ暗無音人形フィギュアの中「ピーーピーー」音がなるのでとても恥ずかしい話、その時がすごい怖かったのです。もう20歳でしたが、真っ暗無音人形フィギュアの中を歩いて出口まで向かうのが恐ろしかったのです。その時に恐ろしさを断ち切るためにいつも
「セコムしてますか?」
の言葉と長嶋監督の笑顔を思い出して、怖さを緩和させて外までなんとか行けていました。
2年間そこのバイトを続けれていたのも長嶋監督がセコムのCMをやって温かさを発信してくれていたおかげだと思います。
最近の僕らの単独ライブのアンケートで
小さい頃は娘が自分に「ダメー」とやってくれてたが、高校生になりやってくれなくなりました。娘との会話もどんどん減っていきましたが、今日トム・ブラウンの単独ライブに久しぶりに家族3人で行き、また来年も行こうと言ったら「ダメー!」と、小さい頃以来やってくれたというものがありました。
僕も学生時代は少なからず反抗期があり、積極的にすごい会話をしてたわけではない時期がありました。ちょうど長嶋監督が現役で監督をやっていた時期です。そんな時期に父さんが「ジャイアンツのチケット取ったぞ!」と、言って野球に連れて行ってくれていました。何か友達との予定があっても空けて長嶋ジャイアンツの試合を優先して観に行っていました。
その時期の子供なんていうのは何があっても父親母親とはどこかに行かなかったりする人も少なくはないかもしれないけども、それを越えるくらい、「長嶋監督を見たい」という気持ちにしてくれていたのです。
そう考えたら家族仲が今も良好なのはかなり長嶋監督のおかげもあるのではないかなと思います。
なんて考えていたら新大阪に到着しました。
気がついたら悲しみよりも長嶋監督に頭が下がる想いが強くなりました。
これで収録にちゃんと挑めそうです。
長嶋茂雄終身名誉監督、今までお疲れ様でした。
長嶋終身名誉監督の意思を受け継いでこの後の「マルコポロリ!」は
スーパーマラドーナ武智終身非許容芸人
としてやりきってきます。