SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第48回「バンドマン」

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公開日:2025/6/27

 バンドマンって総合的に見て、良いイメージは無いよね。どの口が言ってんだって思うけど、正直なところ。
 経済面、思考と嗜好、女性関係に生活習慣、将来性。どの切り口から見ても、どの角度から眺めても、決して「良い」とは言い難いと思うのだ。
 もしも私に娘がいたとして、「お父さん、私彼氏ができました」なんて報告を受けて、ディテールを伺った時に、バンドやってて、なんて言葉が出てきたら即座に「一旦連れてこい」って言うもんね。それがもしも、ロン毛で細くて刺青入ってて目元黒く塗ってるやつだったら、一発ぶん殴るとかそういうレベル遥かに越えて、気絶しちゃうよね。まアきっとそいつは話せば滅茶苦茶良いやつだし、割と気がきくし、ユーモアだってある方だと思うし、根が真面目だから愛嬌すらある奴なんだろうけど。多分。
 でもやっぱり、なんかなア。実態はどうなんですかね、実際。信頼できるんですかね、元来。

 予め断っておくが、世間一般的なバンドマンのイメージの大部分は、大きく拗らせたやつの素行によって出来上がっていると言って間違いないと思っている。サメと一口に言っても人を襲う可能性があるサメなんてほんの僅かだし、その事例だって物凄く少ない。しかし不運にも起こってしまったごく僅かな事故や、ジョーズなんかがフィーチャーされて、サメ即ち怖い生き物、という印象になってしまっているのに似ている。だからバンドマン界のジョーズのせいでバンドマンに対するイメージが良くないものとして確立されているという構図なのだ。
 だから私もバンドマンを代表して、「我々はジョーズのせいで身に覚えのないカルマを背負わされている!」と叫び散らかして回りたいところではあるが、自分も大なり小なりサメであるという自覚はあるから、近くに人が来たらちょっと齧ることはあるかもと考えたり、実際にちょっとだけ齧っちゃった時のこと(夢かな)を思い出して、ほなやめとこオ、と口を噤むに至る。か弱く悲しきネコザメです。
 でも、どの職業にも拗らせてる奴はいる。水商売であるバンドマンだからこそ、極端な一例との掛け算で良いイメージは持たれないけど、品行方正、謹厳実直、清廉潔白な職業(責任を負いたくないのであなたが勝手に想像してください)であったとしても、一部極端なやつの存在は否めないわけで。何が言いたいのかというとパンダが人を襲った例があるんだぞ、ということ。あれ、着地ここじゃなかった感ある。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中