SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第48回「バンドマン」

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公開日:2025/6/27

 ちなみに、食えてる食えてない食いたい食うつもりはないは別として、バンドマンは賭す時間や、掛ける労力に自由が効く種族ではあるから、決まりごとの多い仕事に比べると、振れ幅は相当大きい。采配によって生真面目にも、真面目にも、不真面目にもなる。往々にして人は楽な方に流れがちだと思うので、不真面目な人種が多いということは間違いないのかもしれないね。
 しかし、昨今のバンドってのはもはやサブカルチャーじゃなくてメインカルチャーだ。乱立しているフェスシーンとかみると本当にそう思う。元は不良文化からの派生ではあるかもしれないけど、今バンドマンで不良やならずものだったやつなんて殆どいないと思う。バンドマンは、好きでうっかりこればっかりやってたから結果的になってしまったというものから、「野球選手になりたい」とか、そういう職業になるものに変化していると思う。世間からのイメージはあまり変わりないとしても、在り方は明らかに変わってきているのだ。まア、世代で区分したり、まんべんなく人を見てるわけではないからよくわかりませんが、どうだろ、まともな奴の数が増えてるんじゃないかな。
 とにかくあれだ、バンドマンだからと言って一蹴することなかれ、って感じのまとめでいいんじゃないだろうか。憂いてるわけでも嘆いてるわけでもなく現実として、世間様は水商売や浮草稼業に風当たりが強いからね。優しくしろとか偏見をなくせなんていうつもりは毛頭ないが、枠組みで捉えずに、一人の人間として見てみるのがよろしいかと。
 何にせよ、そうだ。誰かから聞き齧った良し悪しはさておき、何事も超フラットなところに一旦置いて、自分でしっかり見たり触ったりしてそれが好きか好きじゃないかの自己判断だけで良いのではなかろうか。
 
 で、そうは言っては見たものの、もしも私に娘がいたとして、本当にバンドマンを連れてきちゃったら、どうしよ。一旦苦言を呈すと思う、ありとあらゆる角度から。その時「何言われても仕方ないっす。でも筋通して音楽やってきたんで」っていうモノホンのバンドマンだったら将来すげエ心配だし、「職業差別ですよ、それ」とかってぬるいこと言うバンドマン風のやつだったら生理的に無理だし。いい塩梅の見当がつかない。
 まアとりあえず一旦、家にある固いものは全部投げて、両眼球を強めに押してみるか。
 自分のことは棚にあげません。自分を含め、周りの仲間、先輩、後輩を踏まえて結論出します。
 自分の娘がバンドマンを連れてきたら、本当に嫌です。

<第49回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中