双子の現役医大生はリサイタルチケット完売続出のプロピアニスト! 二刀流のふたりが初著書で伝える「頑張った先は、最高だ!」
公開日:2025/7/1

音楽家の登竜門のひとつとされる大阪国際音楽コンクールで優勝し、ドイツの音楽祭やアメリカのカーネギーホールで演奏を披露した双子の連弾ピアニスト・兄ーズ。プロのピアニストとして活動する一方、2025年春に医大にも現役合格した。『夢を奏でる ピアニストと医師の二刀流を目指す双子の物語』(兄ーズ(山下順一朗、山下宗一郎)/KADOKAWA)は、そんな彼らの歩みや原動力、練習方法などを紹介。「練習は大嫌い」と公言しつつ、「頑張った先は、最高だ!」と語るに至った足跡を辿る。

天才ではないから、努力するのみ!
SNSでの演奏動画も人気の彼らが、ピアノを始めたきっかけは酔っ払った父親が買ってきた電子ピアノ。
「家にピアノがあるから、習いに行こう」の母親の一言で2歳頃からピアノ教室通いがスタート。「習っているから、コンクールに出てみよう」「双子だから、連弾してみれば」と次々と新たな展開に突入したそう。
「練習は大嫌い」「遊びたかった」と書籍内でも再三述べているが、「どうせやるなら、やりきったと思うまでさせたい」「いちばん上の景色を見て欲しい」という両親の思いに応える形で渋々練習。しかし、難病で重度心身障がい児の弟の誕生は、「病院で闘う弟に兄ちゃんたちの頑張りを見せたい」とピアノに向き合う姿勢に変化をもたらすことに。さらに、退院後の自宅介護を家族全員と医療従事者で行うことから、「医師になる」気持ちも芽生えたと綴っている。


とは言え、好成績をおさめるのは並大抵のことではない。本書では「僕らは、ピアノの天才ではないと思う。天才に並ぶには、努力するしかなかった」と語り、長時間の練習はもちろん、工夫を凝らした練習法なども披露。ふたりに寄り添い続けた母も「1日でも練習休みという例外を作ったら、低きに流れます。何があっても、練習は欠かしませんでした」と振り返り、ピアノがない旅先でも譜面読みを行うなど猛烈な練習を繰り返したことを明かしている。
工夫満載のピアノ練習方法は受験に取り組む時にも役立ったそうで、「医学部受験には5000時間の勉強が必要と言われても苦痛ではなかった」「小さな目標を定めて、クリアしていけばいいと思った」と語る。「頑張った先は、最高だ!と知っていたから、努力を続けられた」というふたりの言葉は、高みを目指し、極めた者ゆえの説得力を持って読者に響くはずだ。
大谷翔平選手の活躍で二刀流を夢見る子どもたちは多い。頑張ってきたふたりのリアルな声に加え、両親のバックアップも書かれている本書は、夢に向かって頑張る子どもと、子育て中の親に刺さる一冊と言える。
文=宮前晶子
兄ーズ
4人きょうだいの長男と次男で双子。大阪国際音楽コンクール連弾部門で優勝し、招聘されたアメリカ・カーネギーホールでのガラコンサートでは大盛況をおさめた。2024年3月プロデビューする一方で、医師を志し、2025年3月にふたり揃って医学部現役合格。現在、医大生ピアニストとして活動している 。